海の向こうの競馬、そしてホースマン

第12回
競馬放送の担当から異動を命じられ、テレビ東京を退社
 

馬術部生活を中心に、
学生時代を謳歌した合田青年でしたが、
慶応義塾大学4年生となり、
「就職」というものを真剣に考えなければ
ならない時期を迎えました。

「正直、牧場の仕事を続けていくのも
 いいかなぁとも考えてはいたんです。
 でも、両親はせっかく大学まで行ったのだから、
 多少は学歴を活かした仕事に就いて欲しいと
 願っていたのですね」

「まぁ、親の考えも一理あるかなぁと思い直して、
 結局、テレビ東京に就職することに決めた。
 テレ東を選んだのは、
 『土曜競馬中継(現在のウイニング競馬)』
 を放送していたからです」

「それで、入社して2年は営業セクションで
 仕事をしていたのですが、
 その後スポーツ局に異動して、
 競馬中継に携えるようになりました」

競馬中継のディレクターとして
経験を重ねていた合田さんですが、
入社6年目に大きな転機が訪れます。

「テレビ局っていうのは、
 けっこう社員の異動があるところで、
 ぼくも『土曜競馬中継』を離れて、
 番組制作とはまったく関係のないセクション
 への異動を内示されたのです」

「でも、ぼくはテレビ業界で生きていくために
 テレ東に入社したのではない。
 競馬に携るために、
 この会社に入ったのですから
 ―まあ、ぼくのようなタイプは、
 社員のなかで超少数派でしょうけど(笑)―、
 競馬中継からハズされてしまえば、
 テレビ東京で働き続ける理由も
 なくなってしまったんですよね」

フリーランサーとなった合田さんは、
競馬業界の大先輩の方々の誘いもあり、
競馬にまつわる様々な業務を行なう
(有)リージェントを設立します。
1988年、合田さんが29歳となる年のことでした。

(第13回に続く)

構成・文/関口隆哉

 

合田直弘氏 プロフィール

1959年東京生まれ。慶応普通部(中学)時代から馬術部に所属するかたわら、千葉新田牧場で「乗り役」としてのアルバイトをこなす。慶応大学経済学部卒業後、1982年テレビ東京に入社。『土曜競馬中継』の制作に携る。1988年テレビ東京を退職し、内外の競馬に関する数多くの業務をこなす(有)リージェントの設立に参加。
現在は、『世界の競馬』(NHK-BS)、『鈴木淑子のレーシングワールド』(グリーンチャンネル)などのキャスターも務めている。