アイルランドを本拠地とするクールモアスタッドには、
欧州生産界を代表する大種牡馬たちが数多くけい養されています。
現役であれば、ガリレオ、モンジュー、デインヒルダンサー、ディラントーマスなど。
「欧州の至宝」と呼ばれ、現在は種牡馬を引退したサドラーズウェルズも、
このクールモアスタッドを本拠地としていました。
クールモアスタッドの総帥が、1948年生まれのジョン・マグナー氏。
マスコミ嫌いとしても知られるジョン・マグナー氏は、
「クールモアマフィア」とも呼ばれる強面ですが、
その素顔は、単なる気のいいオジさんだという説もあります。
「これは、ぼくが直接体験した話ではなく、
とある日本人の馬主関係者から聞いた話なのですが」と前置きして、
合田さんが、ジョン・マグナー氏の、
こんな豪快エピソードを披露してくれました。
「その方は、ジョン・マグナーさんと、
その奥様であるスーザン・マグナーさん
(注:マグナー氏関連の現役競走馬は、すべて奥様名義で走っています)
が主催するホームパーティに招待されたそうです」
「まず、とても高価なシャンパンが開けられ、
各テーブルに大きなサラダボウルが回ってきた。
普通なら、色彩豊かな野菜が盛られているはずのサラダボウルですが、
その色は真っ黒だった。
そう、なかには山盛りのキャビアが入っていたわけです」
「ところが、出席者のなかには、
物凄く大量のキャビアを自分のお皿に取ってしまう方もいたんですね。
その日本人馬主関係者にボウルが回ってくるころには、
中身がだいぶ淋しくなっていた。
でも、すぐに給仕は、キャビアが山盛りになった
新しいサラダボウルを携えてやって来たそうです(笑)」
おそらく時価数百万円はするであろう
サラダボウルが飛び交うホームパーティ。
一度は招待されてみたいような…、
そうでもないような…というところでしょうか。
(第28回に続く)
構成・文/関口隆哉
1959年東京生まれ。慶應中学時代から馬術部に所属するかたわら、千葉新田牧場で「乗り役」としてのアルバイトをこなす。慶應大学経済学部卒業後、1982年テレビ東京に入社。『土曜競馬中継』の制作に携る。1988年テレビ東京を退職し、内外の競馬に関する数多くの業務をこなす(有)リージェントの設立に参加。
現在は、『世界の競馬』(NHK-BS)、『鈴木淑子のレーシングワールド』(グリーンチャンネル)などのキャスターも務めている。