「違う“鳥”が飛んで来た。
今年のベルモントSは、まさにそんなレースでしたね(笑)」
合田さんの言う通り、
現地時間6月6日(日本時間7日朝)にベルモントパーク競馬場で行われた
ベルモントS(D12F)を制したのは、1番人気に推された、
ケンタッキーダービーの覇者マインザットバードではなく、
伏兵中の伏兵サマーバードでした。
ちなみに、サマーバード、マインザットバードともに、
2004年ベルモントSの勝ち馬でもあるバードストーンを父に持っています。
「1番人気馬マインザットバードの敗因には、
ケンタッキーダービー、プリークネスSと続いた
激戦の疲れもあったかと思います。
そしもうひとつ、鞍上のC・ボレル騎手が、
ベルモントパーク競馬場での騎乗経験を、
ほとんど持たなかったことも、
響いてしまったかもしれません」
「アメリカでは大きな競馬場となるベルモントパーク競馬場は、
ペース判断が難しいコースなんです。
最後方を追走していたマインザットバードのボレル騎手は、
スローペースと判断したのか、向こう正面で仕掛けてしまった。
結果的には、その早仕掛けが3着に終わる要因になったのではないでしょうか」
「出走各馬が、早めに仕掛けた
マインザットバードにつられて動き出したなかで、
一頭だけじっと我慢している馬がいた。
K・デザーモ騎手が手綱を取るサマーバードです」
4角4番手の位置から豪快に差し脚を伸ばしてきたサマーバードは、
2着ダンカークに2馬身4分の3差を付ける完勝で、
ベルモントS馬の栄誉を得ました。
勝ちタイム2分27秒54は、過去10年間のこのレースで、
3番目の好時計となりました。
「デザーモ騎手は、1998年のリアルクワイエット、
そして昨年のビッグブラウンと、このベルモントSで
二度三冠達成を逃す苦汁を飲んでいます。
悔しさを味わいながら、ベルモントSはどう乗るべきかを掴んでいった。
デザーモ騎手の豊富な経験が、
今回のサマーバードの勝利に大きく貢献したことは、
間違いのないところでしょう」
明日は1番人気馬が素晴らしい勝利を得た、
英オークスのレース評をお届けします。
(第40回に続く)
構成・文/関口隆哉
1959年東京生まれ。慶應中学時代から馬術部に所属するかたわら、千葉新田牧場で「乗り役」としてのアルバイトをこなす。慶應大学経済学部卒業後、1982年テレビ東京に入社。『土曜競馬中継』の制作に携る。1988年テレビ東京を退職し、内外の競馬に関する数多くの業務をこなす(有)リージェントの設立に参加。
現在は、『世界の競馬』(NHK-BS)、『鈴木淑子のレーシングワールド』(グリーンチャンネル)などのキャスターも務めている。