合田直弘氏インタビュー?海の向こうの競馬2 そしてホースマン

今年の各国クラシック戦線の見所、注目馬まで合田さんがキッチリとレクチャーしてくれます!
バックナンバー
最終回
ニューマーケットやシャンティにJRAのサテライト厩舎を!
第49回
海外ビックレースの馬券発売を!
第48回
日本馬の海外遠征に求められる「適材適所」の考え方
第47回
ウオッカの海外遠征でオススメしたいレース
第46回
ほっておいても新星が登場する欧州古馬中距離戦線
第45回
39年振りの英3冠馬誕生を密かに期待!
第44回
大レース制覇を狙う3歳牡馬陣の動向にも注目!
第43回
2頭の女帝の世代間抗争が米競馬のハイライトに!
第42回
実力派人気薄馬が仏2000ギニーの雪辱果たす-第169回 仏ダービー・レース評
第41回
20年振りの2冠馬誕生、エプソムに輝くシーザスターズ-第230回 英ダービー・レース評
第40回
ブエナビスタの好敵手となるか、サリスカ-第231回英オークス・レース評
第39回
栄冠は人気薄の"Bird"に輝く!-第141回ベルモントS・レース評
第38回
ブエナビスタの一族が仏3歳牝馬戦線をリード!-第169回 仏ダービー&第161回 仏オークスプレビュー
第37回
20年振りとなる2冠馬誕生か!?-第230回 英ダービープレビュー(2)
第36回
天才調教師筆頭にアイルランド勢大充実-第230回 英ダービープレビュー(1)
第35回
2歳牝馬女王の巻き返しなるか!?-第231回 英オークスプレビュー
第34回
歴史的女傑の走りに大注目-第141回ベルモントSプレビュー
第33回
ロジユニヴァースに欧州競馬への適性アリ!
第32回
世界どこでも互角の勝負できるオークス1、2着馬
第31回
アンライバルドに望みたい3歳時の"Kジョージ"参戦
第30回
南米ブラジルの心に残る競馬の街
第29回
アメリカの競馬場は"格差社会"
第28回
サッカー選手のステータスは馬主になること!?
第27回
世界の大馬主・その豪快エピソード(3)-ジョン・マグナー氏
第26回
世界の大馬主。その豪快エピソード(2)-ダビストック伯爵
第25回
世界の大馬主・その豪快エピソード(1)-シェイク・モハメド氏
第24回
海外遠征の新たな可能性を示したアースリヴィング
第23回
レッドディザイアは世界的マイラーになれるかも
第22回
ブエナビスタはヴェルメイユ賞から凱旋門賞が理想!?
第21回
首位種牡馬と障害専門種牡馬
第20回
日本競馬に向かなかった英ダービー馬たち
第19回
2009年春、ニューマーケットで再会した懐かしの名馬
第18回
ニューマーケットヒースにおける極め付けの贅沢
第17回
ニューマーケット競馬場最大の長所は馬に優しい環境
第16回
ニューマーケット競馬場におけるレース観戦の醍醐味
第15回
伝統に合わせて決まるレースの施行距離
第14回
ノーブルな雰囲気が漂うエプソムダービーデー
第13回
心に深く残る米3冠戦(3)-スマーティジョーンズの油断(2004年)
第12回
心に深く残る米3冠戦(2)-リアルクワイエットの痛恨(1998年)
第11回
心に深く残る米3冠戦(1)-バーバロの悲劇(2006年)
第10回
アレックスちゃんのレモネードスタンド(3)
第9回
アレックスちゃんのレモネードスタンド(2)
第8回
アレックスちゃんのレモネードスタンド(1)
第7回
名門ミーハン厩舎のもう一枚の大駒に注目!
第6回
超名血の新星登場と女王の失速-第201回英2000ギニー&第196回英1000ギニー・レース評
第5回
残り2冠では、敗れた有力馬たちの巻き返しに期待!
第4回
理解不能の大波乱劇-第135回ケンタッキーダービー・レース評
第3回
観戦に行くなら、ベルモント競馬場がオススメ!
第2回
第201回英2000ギニー(G1・8F)、第196回英1000ギニー(G1・8F)プレビュー。2歳牝馬王者の走りに大注目!
第1回
第135回ケンタッキーダービー(G1・D10F)プレビュー。レベル高い混戦を抜け出す新ヒーローは!?

第20回 日本競馬に向かなかった英ダービー馬たち

1990年代に誕生した10頭の英ダービー馬のうち、
ジェネラス、ドクターデヴィアス、コマンダーインチーフ、
エルハーブ、ラムタラ、ハイライズ、オースと、
実に7頭までが、種牡馬として日本に導入されました。
もちろん、1980年代後半の競馬ブームに端を発した、
日本競馬界の好況が、その背景にあったことは間違いありませんが、
そのほかにも、2つの理由が英ダービー馬の輸入を促進したと、
合田さんは分析してくれました。

「まず、ダービー、オークス、ジャパンCと、
  2400m戦の価値が高い日本では、
  欧州最高峰の12F戦のひとつである英ダービーの勝ち馬に
  大きな価値を見い出していたことは、確かですね」

「もうひとつ」と合田さんが続けます。

「年々、スピードが重視されてきていた欧州競馬のなかで、
  エプソム競馬場の2400m戦という
  苛酷な条件を勝ち抜いてきた英ダービー馬の種牡馬価値が、
  段々落ちてきていた側面も無視できない。
  つまり、英ダービー馬は、
  日本人バイヤーにとって、買いやすい存在でもあったわけです」

「英ダービーは、高低差が45mもあるコースで争われる。
  45mといえば、10階建てのビルの高さに匹敵します。
  英ダービーを勝ち抜くには、スタミナとパワーが何より問われる。
  現代競馬では、同じG1戦の勝ち馬なら、
  マイルや10FのG1レースを勝った方が種牡馬になるときに有利なのは、
  世界的な傾向でもありますしね」

コマンダーインチーフのような例外もありますが、
日本にやって来た1990年代の英ダービー馬たちの種牡馬成績は、
全体的に苦戦傾向が目立ちました。

「もちろん、英ダービー馬のなかには、
  素晴らしいスピード能力を兼ね備えたタイプもいますが、
  パワーとスタミナだけという馬も、いないわけではない。
  日本に導入されて成功できなかった英ダービー馬が多いのも、
  ある意味、必然だったのかもしれません」

明日は、種牡馬として対照的な状況に置かれている
ガリレオとシャーミットという2頭の英ダービー馬、
そして4年前に距離が短縮された仏ダービーの話をお届けします。

(第21回に続く)
構成・文/関口隆哉



1959年東京生まれ。慶應中学時代から馬術部に所属するかたわら、千葉新田牧場で「乗り役」としてのアルバイトをこなす。慶應大学経済学部卒業後、1982年テレビ東京に入社。『土曜競馬中継』の制作に携る。1988年テレビ東京を退職し、内外の競馬に関する数多くの業務をこなす(有)リージェントの設立に参加。
現在は、『世界の競馬』(NHK-BS)、『鈴木淑子のレーシングワールド』(グリーンチャンネル)などのキャスターも務めている。