ダイシンボルガードが制した1969年以来
40年振りの不良馬場での開催となった第76回日本ダービー。
勝利したのは、皐月賞14着から見事な巻き返しを見せた
2番人気馬ロジユニヴァースでした。
「勝敗を分けたのは、例年より8秒ほど余計に時計がかかった、
極め付けの不良馬場であったことは間違いないと思います」
そう断言した合田さんが、さらに続けます。
「アンライバルドを筆頭に、
切れ味を武器とするタイプが多い皐月賞上位組、
豊かなスピードを誇るNHKマイルC馬ジョーカプチーノなどが、
軒並み下位に沈んだのは、まさしく馬場のせいでしょう」
「ダービー馬となったロジユニヴァースはもちろん、
リーチザクラウン、アントニオバローズ、
ナカヤマフェスタといった上位勢は、
いずれもパワーが必要となる不良馬場への
高い適性を持っていた馬たちだと言えますね」
こういう状況のなかで4馬身差の圧勝を飾った
ロジユニヴァースのパワーとスタミナは、
欧州の競馬向きではないのか?
そんな質問を合田さんに投げ掛けてみました。
「そういった面は、確かにあると思います。
皐月賞以前は連勝を続けていた馬ですし、
地力の高さも疑いようがない。
日本ダービー馬として、
是非、“欧州の王道”とも言える
2000~2400mのメジャーG1レースに
挑戦してもらいたいですね」
「まあ、これはロジユニヴァースの走りを見ながら、
直感的に思ったことなのですが、
9月にアイルランドの
レパーズタウン競馬場で行われる愛チャンピオンSは、
この馬に向くレースなのではないでしょうか」
距離10Fで争われる愛チャンピオンSですが、
英ダービー馬ニューアプローチが勝利した
昨2008年の勝ちタイムは2分7秒5。
例年、パワーも問われる一戦だけに、
ロジユニヴァースには打ってつけの
欧州メジャーG1戦かもしれません。
「追い込んで4着したナカヤマフェスタも、
欧州競馬へ向いたタイプでしょう。
こちらは、王道のG1戦というのでなく、
適材適所の重賞レースを狙っていくと
チャンスが広がっていくと思いますよ」
「一昨日も言いましたが、日本馬が海外遠征するなら、
“来年まで待って”とは言わずに、
状態がピークのときにチャレンジして欲しい。
意欲のある馬には、
3歳夏からの積極的な挑戦を望みたいですね」
明日からは、米3冠最終戦となるプリークネスS、
そして、英ダービー、英オークス、仏ダービーといった
欧米3歳戦線の頂点を争う大一番のプレビューをお届けします。
乞うご期待!
(第34回に続く)
構成・文/関口隆哉
1959年東京生まれ。慶應中学時代から馬術部に所属するかたわら、千葉新田牧場で「乗り役」としてのアルバイトをこなす。慶應大学経済学部卒業後、1982年テレビ東京に入社。『土曜競馬中継』の制作に携る。1988年テレビ東京を退職し、内外の競馬に関する数多くの業務をこなす(有)リージェントの設立に参加。
現在は、『世界の競馬』(NHK-BS)、『鈴木淑子のレーシングワールド』(グリーンチャンネル)などのキャスターも務めている。