「エプソムダービーやコロネーションCの施行距離は12F10Yd。
ドンカスター競馬場で行なわれる
3冠最終戦セントレジャーは、14F132Yd。
この10Ydとか、132Ydといった半端は、
キッチリとした数字が好きな日本人からすれば、
なんともスッキリしない感じがしてしまいますよね」
合田さんが、少し笑いながら、
こんな話を切り出してきました。
「でも、この中途半端な数字には、
イギリス競馬の“本質”といったものが、
見え隠れしているように思えるのです」
「エプソムダービーでもセントレジャーでも、
始めから、キッチリと距離を測って、
レースのスタート地点を決めていたわけではない。
この位置からスタートして、
ゴール地点まで走るということが、
長い伝統のなかで決まり事になっていったわけです。
で、あるとき、
毎年のスタート地点からゴールまでの距離を測ってみたら、
それが12F10Ydであり、14F132Ydであった…」
「まあ、日本人的な感覚からすれば、
10Yd長ければ、その分スタート地点をズラして
12Fキッカリにすればいいのにと思うわけですが、
イギリス人は、いままでこの距離でやってきたのだから、
これからもこのままでいいや、という風に考える(笑)」
「そして、このイギリス人の考え方というのは、
競馬とは人工的なものではなく、
自然と共存しながら行なうものだという信念が
ベースになっているのだと思います」
ということで、明日からは、
「自然と共存しながら行なわれるイギリス競馬」
を体現している、
英1000ギニー、英2000ギニーの舞台でもある
ニューマーケット競馬場について、
合田さんの熱いトークが繰り広げられていきます。
乞うご期待!
(第16回に続く)
構成・文/関口隆哉
1959年東京生まれ。慶應中学時代から馬術部に所属するかたわら、千葉新田牧場で「乗り役」としてのアルバイトをこなす。慶應大学経済学部卒業後、1982年テレビ東京に入社。『土曜競馬中継』の制作に携る。1988年テレビ東京を退職し、内外の競馬に関する数多くの業務をこなす(有)リージェントの設立に参加。
現在は、『世界の競馬』(NHK-BS)、『鈴木淑子のレーシングワールド』(グリーンチャンネル)などのキャスターも務めている。