「“ヨーロッパの競馬場をひとつだけ訪ねるとしたら、
どこがいいですか?”という質問を受けたとしたら、
迷わずに、こう答えます。
“ニューマーケット競馬場が、いちばんのオススメですね!”」
こう切り出した合田さん。
果たして、その理由とは?
「まず第一に、日本の競馬場では、
とても見ることのできない景色が、
そこにあるということです」
「とにかく、広さが半端ではない!
英2000ギニーや英1000ギニーが行なわれる
ローリーマイルコースは、2000mの直線コース。
日本には新潟競馬場の1000mの直線コースがありますが、
その倍ですものね」
さらに、決して観客に優しくない点も、
ニューマーケット競馬場を訪ねるべき理由のひとつだと、
合田さんは主張します。
「たとえば、英2000ギニーを観戦するとします。
日本の競馬場のように、どこからでも見られる
ターフビジョンや無数に据え付けられた
モニター画面のようなものはありませんから、
スタートが切られたことは、
場内アナウンスで知るしかない。
実際、どんなに精度が高い双眼鏡を持っていったとしても、
ゴール前からスタート地点の馬たちを観ることはできませんからね」
「やがて、ゴールに向かって走ってくる馬たちの姿が
豆粒のように見えてくる。
その姿が、だんだんと大きくなってきて、
ついにはドッドッドッという感じで、
一気にゴールになだれ込んでくる。
そして、ゴールを駆け抜けていった馬たちの姿が、
徐々に草原の彼方に消えていく。
こういうレースの見方は、
日本の競馬場では、絶対に味わうことができません」
ローリーマイルコースで行なわれる
レース観戦の醍醐味を熱く語ってくれた合田さんですが、
最後に笑いながら、こう付け加えました。
「まあ、お客さんに対して、
これほど不親切な競馬場も滅多にないのですけどね」
(第17回に続く)
構成・文/関口隆哉
1959年東京生まれ。慶應中学時代から馬術部に所属するかたわら、千葉新田牧場で「乗り役」としてのアルバイトをこなす。慶應大学経済学部卒業後、1982年テレビ東京に入社。『土曜競馬中継』の制作に携る。1988年テレビ東京を退職し、内外の競馬に関する数多くの業務をこなす(有)リージェントの設立に参加。
現在は、『世界の競馬』(NHK-BS)、『鈴木淑子のレーシングワールド』(グリーンチャンネル)などのキャスターも務めている。