現時点で有力視されている日本馬の海外遠征というと、
ブエナビスタとディープスカイ陣営が表明しているG1凱旋門賞への挑戦です。
合田さんは、両陣営の頂点のレースに挑戦する意気込みを高く評価しています。
「ただし…」と、合田さんが続けます。
「凱旋門賞が、数ある欧州のG1戦のなかでも、
“もっとも勝ちにくい競走” であることは事実です。
加えて、欧州競馬において凱旋門賞の価値だけが突出しているわけでもない。
たとえば、“Kジョージ” はもちろん、
英、愛の両チャンピオンSや、
インターナショナルSといった中距離G1戦も、
欧州の競馬関係者から、とても高い評価が与えられているのです」
「ゼンノロブロイがインターナショナルSに参戦して、2着に好走したのは、
レースが行なわれるヨーク競馬場のコンディションが、
この馬に向いているという判断が功を奏した結果でもありました。
その馬のコース適性を考慮に入れながら、
海外レースの選択肢を広く持つことも大切でしょうね」
今年は、アースリヴィングのドバイ遠征、
タスカータソルテのシンガポール航空国際C挑戦(5着)といった、
必ずしもトップ中のトップではない日本馬が、
海外で好成績を収めています。
「今年のシンガポール航空国際Cは、
勝ったグロリアデカンペオンを筆頭に、
非常にレベルの高い馬たちが集結していた。
そのなかで5着に頑張ったタスカータソルテは、
とても立派な競馬をしたと思いますよ」
「ステイゴールドのように、日本でなかなかG1を勝てない馬でも、
海外に出てビッグレースを勝てる馬は、
決して少なくはないと思います。
“適材適所” という考え方に基づいた海外遠征。
そういったことが、もっともっと試みられるようになると、
本当にうれしいですよね」
(第49回に続く)
構成・文/関口隆哉
1959年東京生まれ。慶應中学時代から馬術部に所属するかたわら、千葉新田牧場で「乗り役」としてのアルバイトをこなす。慶應大学経済学部卒業後、1982年テレビ東京に入社。『土曜競馬中継』の制作に携る。1988年テレビ東京を退職し、内外の競馬に関する数多くの業務をこなす(有)リージェントの設立に参加。
現在は、『世界の競馬』(NHK-BS)、『鈴木淑子のレーシングワールド』(グリーンチャンネル)などのキャスターも務めている。