世界の中のニッポン ニッポンの中の世界

ジョン・マコーマック

ジョン・マコーマック氏プロフィール

1967年、アイルランド・ダブリン生まれ。
アイルランド・イギリス・アメリカ・オーストラリア・カナダの厩舎・牧場での経験後、ヨーロッパ大手サラブレッド商社・BBAアイルランドにてエージェントとして12年間勤務、10年前に独立。
日本関連ではこれまでに、シンコウフォレスト、タップダンスシチー等のGIウイナーを発掘。また繁殖ではウインドインハーヘアー(ディープインパクトの母)を日本に仲介。今年もすでに2回来日をしている知日派。

第5回 「日本の競馬は世界最高」

徹底したファンサービス、
そして、メディアの充実した情報提供。
日本の競馬が、世界随一の熱さを誇る背景には、
主催者の徹底したマーケティング戦略がある。
―― 日本のダービーを観戦したことはありますか?

ジョン氏(以下)

ええ、もちろん。
私が見た日本ダービーの中では、
94年のナリタブライアンがいちばん感動しました。

―― ディープインパクトはいかがでしたか?

J          

ディープインパクトのダービーも、
もちろんいいレースでした。
ただ、個人的な好みでいえば、
ナリタブライアンのレースほうが印象に残っています。

―― G1などで、日本のファンが、手拍子をしたり、コールをしたり、
           熱狂するのはどう思いますか?

ファンタスティック! 
自分が見てきた国の中では、
日本の競馬のシステムは最高です。
JRAの開催している競馬は世界最高。
ファンの熱さ、それを支える主催者のサポート、
何から何まで素晴らしい。
世界中の競馬主催者が参考にしていると思います。



 
―― とある外国人ジョッキーが、G1を勝ったときに
           「まるでロックスターにでもなった気分だ」
           とコメントしたことがあったんですが、 
           他の国では、そういう雰囲気はないんですか?

日本ほどの熱狂的な盛り上がりを見せる国は、
なかなかないと思います。
日本の競馬がこれだけ盛り上がるのは、
ひとえにJRAのマーケティング活動の成果。
ここまでやっているところは、
世界中どこを探してもないでしょう。
しかも、公的な機関で、
ここまで成功している競馬主催者は、存在しないと思う。
おそらく、とてつもない金額を
広告・宣伝やマーケティングに使っているんじゃないでしょうか。
それを批判する人も、もしかしたらいるかもしれない。
ただ、それをやっているから、競馬がこれだけ盛り上がっている、
というのは、ゆるぎない事実だと思います。
―― では、競馬マスコミについてはどうですか? 
           海外の競馬新聞は、ずいぶんさびしいように感じます。

そうなんです。
たしかに、どこの国にも、競馬新聞はあることはあるけれども、
日本のように情報が充実しているところはありません。
ヨーロッパでは、それぞれ勝手なところで調教しているので、
追い切りのタイムなど、集めようがないんです。
イギリスを例にとっても、
ヨークシャーからニューマーケット、グッドウッドと、
調教場は、イギリス中に散らばっています。
しかも、プライベートでマスコミは入れない有力なところも多い。
その情報を一元的に管理することは不可能に近い。
アメリカは、追い切りタイムが載ってはいるけれども、
日本ほど詳しくはないですね。
日本の競馬が、ある程度管理されているからこそ、
情報も集めやすいし、
それをファンに提供することもできる。
この競馬新聞の充実ぶりこそが、
日本の競馬のマーケティングが成功している象徴だと思います。
先ほど話した、JRAブリーズアップセールも
これと同じようものです。
すべて買い手のためを考えてサービスする。
だからJRAのブリーズアップセールでも、
バイヤーは、自信を持って馬を買える。
競馬新聞にこれだけの情報量があれば、自信を持って馬券を買える。
同じようなことですね。
日本の競馬ファンは、気付いていないかもしれませんが、
非常に恵まれているんですよ(笑)。


 
 

(つづきは金曜日に更新します) 取材/J-horseman編集部