1988年ジャパンCは、タマモクロス、オグリキャップという
日本競馬界が誇る芦毛のスーパースター2頭に、
凱旋門賞馬トニービン、アメリカの強豪マイビックボーイらが絡み、
ファンにとっては胸が沸き立つ、
とても楽しみが大きい国際G1競走となりました。
実際のレースも、期待に違わぬ熱戦となりましたが、
タマモクロスの猛追を半馬身差抑えて勝利したのは、
アメリカから参戦してきた9番人気の伏兵
ペイザバトラー “Pay the Butler” でした。
実は、「執事に給料を払え!」 という馬名の意味が興味深く
(一体、主人と執事の間に何が起きたのでしょう!?)、
戦前からペイザバトラーには、ちょっと注目していたのですが、
まさか、日本を代表する芦毛2頭や、凱旋門賞馬を向こうに廻し、
勝ち切ってしまうとは思っていませんでした。
このペイザバトラーを管理していたのが、
ロバート・フランケル “Robert J. Frankel” 調教師。
2004年米年度代表馬に選出されたゴーストザッパーらを育て上げ、
1995年には、アメリカ競馬名誉の博物館殿堂入りを果たした、
この名トレーナーは、日本競馬界との関わりも深く、
ペイザバトラー以外にも、いずれも師が手掛けた米G1馬である
スクワートルスクワート、エンパイアメーカー、アルデバランが、
日本で種牡馬入りを果たしています。
フランケル師は、2009年11月、病のためにこの世を去りましたが、
師と深い友情で結ばれていた世界的オーナーブリーダー、
ハリード・ビン・アブドゥラ殿下は、
2008年にイギリスで生まれた、父に名馬ガリレオを持つ期待の牡駒に、
追悼の気持ちを込めて、フランケル “Frankel” の名を付けたのです。
2歳8月にデビューしたフランケルは、圧倒的な強さを発揮し、
G1デュハーストS制覇を含む4戦4勝の戦績を残し、
文句なしで2010年全欧最優秀2歳牡馬のタイトルを獲得しました。
3歳になっても、その快進撃は続き、5月のG12000ギニー、
6月のG1セントジェームスパレスSと、ここまで無敗の7連勝、
さらにG1タイトルと名声を積み重ねています。
G1セントジェームスパレスSで、フランケルに果敢に挑み、
8着に終わったのが、日本のグランプリボス “Grand Prix Boss”。
現時点では、英競馬界のボスであるヘンリー・セシル調教師に管理され、
米競馬界のボスであった超一流トレーナーの名を冠した
フランケルとの差は大きいかもしれませんが、
今後も世界をターゲットに研鑽を積み、
いつの日かフランケルを破るような、
ワールドクラスのスターに成長して欲しいところです。
なにせ、グランプリボスを意訳すれば「ボスの最高峰」。
フランケルと比べても、決して名前負けはしていないのですから。
(次回は7月6日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉