「石油輸出国機構 (Organization of the Petroleum Exporting Countries)」
という国際組織があります。
英語の頭文字を取った通称は、“OPEC (オペック)”。
元来、国際的な石油価格は、欧米諸国に設立された巨大複合体企業である、
“メジャー” と呼ばれる 「国際石油資本」 が決定していたのですが、
それに対抗し、産油国の立場を守り、
さらに強化していく目的で結成されたのが、OPECということになります。
1960年に南米ベネズエラと中東のイラク、イラン、
クウェート、サウジアラビアの計5カ国で設立されたOPECですが、
現在はUAE (アラブ首長国連邦)、リビア、エクアドルなどが加わり、
計12カ国の石油輸出国が加盟しています。
このOPECが世界的に注目されたのが、1970年代前半。
第4次中東戦争でアラブ諸国と戦った
イスラエルを支持した先進諸国へのレジスタンスという目的もあり、
OPECは原油価格を4倍も値上げすることを断行したのです。
原油価格の値上がりは、いわゆる 「オイルショック」 を生み出し、
日本を含めた欧米先進諸国は、多大な経済的打撃を受けたのです。
世界的に大きな影響力を持つOPECですが、
それを馬名に冠した大物競走馬がいます。
1980年のダービーを制したオペックホース “OPEC HORSE” が、その馬。
不良馬場で行われた皐月賞で、
ハワイアンイメージの2着していたオペックホースは、
前哨戦NHK杯で7馬身差の圧勝を飾っていた
1番人気馬モンテプリンスに続く2番人気でダービーへ出走します。
そしてレースでは、モンテプリンスとの壮絶な叩き合いをクビ差制し、
見事オペックホースは、ダービー馬の栄誉に輝いたのです。
ダービー後、32連敗を喫し、一度も勝利できなかったオペックホースは、
「さすらいのダービー馬」、「史上最弱のダービー馬」 などと呼ばれる、
陰影の濃い競走生活を送ることになるのですが、
名馬モンテプリンスを横綱相撲の末に降した
第47回ダービーのレース内容は、間違いなくレベルの高いものでした。
現役引退後、種牡馬となったオペックホースは、
種付け頭数に恵まれたわけではありませんでしたが、
OP特別菜の花Sに勝ち、G3京成杯で2着したマイネルヤマト、
北海道営のスターホースで、王冠賞、北斗盃といった
当地の重賞を制したベストンダンディといった強豪産駒を輩出しました。
マイネルヤマト “Meiner Yamato” は冠名+日本を象徴する 「大和」、
ベストンダンディ “Beston Dandy” は冠名+英国の洒落モノを指す言葉。
父の名の由来となったOPECが敵対した先進諸国に因んだ
馬名が付く産駒が成功を収めたのは、
けっこう、皮肉が効いているなとも思うのです。
(次回は6月1日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉