2004年の阪神大賞典を皮切りに、2005年の京都大賞典、
2006年の日経賞と、格式の高いG2重賞を3つ制した強豪馬リンカーン。
3歳時の菊花賞、有馬記念、6歳時の天皇賞・春はいずれも2着に敗れ、
ついにG1ウイナーの仲間入りは果たせませんでしたが、
リンカーンが2000年代の日本競馬界を代表する
名ステイヤーの一頭であることは、疑いようのないところでしょう。
リンカーンという馬名は、
アメリカ合衆国第16代大統領 (在位1861~65年)
エイブラハム・リンカーン “Abraham Lincoln” に由来しています。
奴隷制の拡張に反対し、南北戦争で北部連邦を勝利に導いたリンカーンは、
アメリカ合衆国史上、もっとも有名な大統領のひとりであるとともに、
その任期中に暗殺されてしまった、悲劇の政治家でもあるのです。
歴史に残る超有名人から馬名が付けられたリンカーンは、
7歳春から種牡馬生活を開始し、
その初産駒が2010年夏からデビューしています。
当然、父に縁のある馬名を持つ産駒たちも多く、
かの有名な 「人民の人民による人民のための政治
“Government of the People、by the People、for the People・・・”」
という言葉が盛り込まれたリンカーンの名演説が行われた地名からとった
ゲティスバーグ “Gettysburg”、
フォード・モーターが誇る
超高級車リンカーン・コンチネンタルから命名された
コンチネンタル “Continental” らが、分かりやすい例となっています。
また、その優れたリーダーシップに由来するツルマルリーダー、
改革者のイメージからの連想で名づけられたトーセンリョウマ、
政治家繋がりのサッチャー “Thatcher” らも、
父に影響された馬名と言えるでしょう。
さて、現時点でのリンカーン産駒の代表格となっているのが、
OP特別ジュニアCに勝ち、G3クイーンCで3着した、
牝馬クラシック戦線の有力馬の一頭でもある
デルマドゥルガー “Del Mar Dulga”。
この馬名は、冠名+ヒンドゥー教の女神ということになるのですが、
父の名とは、まったく関係がありません。
ちなみにヒンドゥー教の女神ドゥルガーは、
優美で美しい顔立ちとは裏腹に、恐るべき戦闘能力を保持しているのです。
あるいは、「人」 である父が果たせなかったG1制覇を、
「神」 である娘が現実のものとしてくれるかもしれません。
(次回は3月23日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉