ブルース、ジャズ、カントリー、ロックンロールといった、
アメリカが生んだ音楽のルーツとなっている地域が、
ジョージア州、テネシー州、テキサス州など、
全部で16の州が含まれる、「アメリカ合衆国南部」 です。
奴隷制度、南北戦争といった、
アメリカの負の歴史にも深く関わってきた南部は、
合衆国のなかでも、独特の文化や考え方が
根付いてきた地域でもあるわけです。
アメリカ合衆国第16代大統領エイブラハム・リンカーン、
偉大なる、ボクシング世界ヘビー級王者モハメド・アリ、
現代の超人気俳優ジョニー・デップらの多彩な人材を輩出し、
世界中にフランチャイズを広げる “ケンタッキーフライドチキン” の
本社があるケンタッキー州も、合衆国南部16州のなかに含まれます
ケンタッキー州は、タバコ、牛、豚、トウモロコシなどが特産品となる、
農業がとても盛んな土地ですが、
そのなかでも、競走馬の生産は、州の一大産業となっています。
そして、ケンタッキー州の人々が、
毎年楽しみにしているビックイヴェントが、
5月の第一土曜日にチャーチルダウンズ競馬場で
開催されるケンタッキーダービー。
観客たちが、
ミント・シュレップ(バーボン・ウイスキーをベースにしたカクテル)を
飲みながら、
州歌である “ケンタッキーの我が家 (My Old Kentucky Home)” を
大合唱するケンタッキーダービー・デーは、
活気に満ち溢れた、祝祭の日となっているのです。
G1JBCスプリント、G3根岸S連覇など、
計8つのダート戦重賞を制した
サウスヴィグラス (South Vigorous) の馬名を日本語に訳すと、
「活気溢れる南部」 ということになります。
ケンタッキーダービー当日のチャーチルダウンズ競馬場の雰囲気は、
まさしく、サウスヴィグラスの馬名通りのものと言っていいでしょう。
サウスヴィグラスは種牡馬としても、ラブミーチャン、トーホウドルチェ、
ナムラタイタンなどダート戦線での活躍産駒を出しているだけに、
いつの日か、ケンタッキーダービー出走馬の父となるかもしれません。
さて、現役時代のサウスヴィグラスは、
その馬名に相応しい競馬場で行われたレースに一度だけ出走しています。
それは、“南国土佐” に所在する高知競馬場で開催された
2002年のG3黒船賞。
1番人気に推されたサウスヴィクラスは、
馬名そのものの “活気溢れる” 走りを示し、
8馬身差の圧勝を飾ったのです。
(次回は2月2日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉