イギリスを発生とする球技、例えば、サッカーやラグビーには、
「オフサイド」 と呼ばれる反則が存在しています。
サッカーの場合であれば、
1.敵陣に位置する
2.ボールより前にいる
3.相手の2番目に後方にいる選手(たいていの場合、
ゴールキーパーを除くフィールドプレイヤーを指す)よりも前にいる
という3つの条件がすべて成立すれば、オフサイドの反則が取られ、
相手チームにフリーキックが与えられるわけです。
ラグビーの場合は、ラック、ラインアウト、攻撃、守備ラインなど、
それぞれのプレーの状況によって、オフサイドの規定が設けられていて、
もう少し複雑にはなるのですが、
この反則が設けられた理由は、サッカーとまったく同じです。
つまり、「待ち伏せをして得点をあげようとするのは、卑怯だからダメ!」
ということ。
この考え方は、誇り高き騎士道の伝統を受け継ぐイギリスでは、
何よりも守られるべき原則のひとつとなっているのかもしれません。
戦術や技術が大きく進歩した現代サッカーでは、
相手のストライカーをオフサイドの位置に取り残すために、
バックスの選手たちが、一気に駆け上がって最終ラインを前方に移動させる、
「オフサイドトラップ “Off Side Trap”」という作戦が
採られることがあります。
2002年W杯を闘ったトルシエ・ジャパンでは、
このオフサイドトラップを多用し、
相手の攻撃を封じることに、ある程度成功したのです。
まあ、相手を意図的にオフサイドポジションに置き去りにする、
オフサイドトラップは、オフサイド以上に卑怯な行為なのでは!?
という根本的な疑問もないわけではないのですが…。
競馬の世界にも、現代サッカーの重要な戦術を馬名とした大物がいます。
「サラブレッドにとっての致命的な病」 と呼ばれる
屈腱炎を3度に渡り克服し、
7歳時にG3七夕賞、G3新潟記念、G1天皇賞・秋を
3連勝したオフサイドトラップが、その馬。
もちろん、不屈の闘志を持った苦労人である
オフサイドトラップの競馬人生は、
馬名から受ける印象とはまったく違う、
姑息なところなど微塵もない、
中世ヨーロッパにおける最上級の騎士のような、正々堂々としものでした。
8歳春から種牡馬となったオフサイドトラップは、
自身のような大物産駒は得られませんでしたが、
中央競馬と公営兵庫で計3勝したコスモウェンブリー
(ウェンブリーはイングランド代表の本拠地)、
3歳1月の新馬戦で2着したキックオフ、
3歳2月の新馬戦で3着したパスアンドゴーなど、
サッカーに因んだ、カッコいい馬名を持つ仔供たちを送り出しています。
(次回は8月31の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉