1960年代後半から1970年代前半にかけてのアメリカ映画には、
アウトローや反体制的な人物を描いた一連の作品群がありました。
銀行強盗を生業とするカップルの無軌道で鮮烈な生涯を綴った
『俺たちに明日はない (1967年)』、
自由を求め、大型バイクに乗りアメリカを旅する若者たちが主人公となった
『イージー・ライダー (1969年)』 などが、その代表的作品となりますが、
これらの映画は、“アメリカンニューシネマ” という呼ばれ方をされ、
アメリカ国内だけでなく、日本を含めた世界中の若者たちに、
多大な影響を及ぼしたのです。
アメリカンニューシネマの傑作中の傑作と高く評価されているのが、
ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォードが、
実在の銀行強盗ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドに扮した
『明日に向かって撃て!(1969年)』 。
アメリカ西部から “夢の大地” ボリビアに渡っても、
アウトローな生活とは縁が切れなかった男たちを、
時にシニカルに、時にユーモラスに描写した、この作品は、
公開から40年以上を過ぎた現在でも、十二分な瑞々しさを保っています。
ポール・ニューマンとロバート・レッドフォード、
さらに監督のジョージ・ロイ・ヒルが再びチームを組んだのが、
1930年代のシカゴを舞台とした 『スティング “The Sting” (1973年)』 。
ニューマンとレッドフォードの名コンビが、
仲間たちの力を借りながら、知力と技術の粋を尽くし、
悪徳ギャング団への復讐を遂げるまでを描いた 『スティング』 は、
第46回アカデミー賞最優秀作品賞を受賞することとなりました。
さて、“Sting” というタイトルは、「騙し取る」 という意味の英語。
1998年のG1阪神3歳牝馬S (現阪神ジュベナイルF) を制し、
同年の2歳牝馬チャンピオンに選ばれたスティンガー (Stinger) は、
“Sting” と同じ語源を持つ、「うまい話の裏にあるもの、裏をかく人」
という意味の英語の名詞が、馬名の由来となっています。
ちなみに競走馬スティンガーの方も、その馬名の通り、
1番人気に推された1999年のG1桜花賞で12着に敗れ去ったり、
5番人気の伏兵評価だった2000年のG2京王杯スプリングCを
鮮やかな末脚で勝利したりと、
競馬ファンの 「裏をかく」 のが、なかなかに得意な馬でもありました。
(次回は12月15日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉