監督と主演俳優として、『シザーハンズ』、
『アリス・イン・ワンダーランド』 など、数々の名画を送り出してきた、
ティム・バートンとジョニー・デップ。
この名コンビが、2007年に世に問うた傑作ミュージカル映画が、
『スウィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』
(Sweeney Todd : The Demon Barber of Fleet Street) です。
19世紀のイギリスを舞台とした、この作品は、
無実の罪で捕えられ、家族も失った理髪師の脱獄と、
彼を罪に陥れた判事への復讐劇が描かれています。
ゴールデングローブ賞ミュージカル・コメディ部門で最優秀作品賞を受賞、
さらには初のミュージカル作品で、素晴らしい歌声を披露した
ジョニー・デップが同部門最優秀男優賞を獲得と、
『スウィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』 は、
映画の専門家たちからも、極めて高い評価が与えられています。
さて、物語の舞台となったフリート街 (Fleet Street) は、
数多くの新聞社の本社、支社が所在していることから、
別名 「新聞社街」 とも呼ばれる、ロンドンを代表する通りのひとつです。
この通りが、馬名の一部となっているのが、
2003年のジャパンCダートを勝利したアメリカ馬
フリートストリートダンサー (Fleetstreet Dancer) 。
おそらく、祖母ストリートダンサー (Street Dancer) からの流れもあり、
1998年生まれの黒鹿毛のセン馬に、
フリートストリートダンサーという名が付けられたのでしょう。
フリートストリートダンサーは、重賞未勝利ということもあり、
ジャパンCダートでは11番人気という低評価に甘んじていました。
しかし、レースでは、ダート競馬の本場である
アメリカ馬のパワーとスピード、そして勝負強さを如何なく発揮し、
1番人気アドマイヤドンとの叩き合いを、わずか4センチ差で凌ぎ切ります。
あるいは、アドマイヤドンにとってのフリートストリートダンサーは、
栄光をバッサリと刈り取ってしまう、
“悪魔の理髪師” のような存在だったのかもしれません。
2010年現在、フリートストリートダンサーは、
ジャパンCダートを制した唯一の外国馬であるととともに、
全13字という、日本でG1競走を勝った最長馬名馬にもなっています。
(次回は12月8日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉