ギリシャ神話に登場する太陽神ヘリオス (Helios)。
古代ギリシャの人々は太陽のことを、
4頭立ての馬車に乗って移動する、ヘリオスの姿だと信じていたそうです。
日本でも、「お天道様は何でもお見通し」 という言葉がありますが、
いつも天空にあるヘリオスも、地上の出来事はすべて見えていて、
女神アフロディーテと戦いの神アレスの浮気現場を、
しっかり押さえていたりもしたのでした。
1991、1992年のG1マイルCSを連覇した
ダイタクヘリオス (Daitaku Helios) は、
冠名に太陽神ヘリオスが加わった馬名の持ち主です。
ダイタクヘリオスはマイルCS連覇を含め、
重賞を計7勝もした名馬中の名馬でしたが、
重賞制覇時の評価は2番人気3回、4番人気3回、5番人気1回で、
1番人気で優勝したことは一度もありませんでした。
反対に、6着に敗れた1992年のG1安田記念をはじめ、
1番人気に推された重賞では、2着が1回あるものの、4着以下が3回と、
穴党を喜ばせる結果を数多く残しました。
また、レース前のパドックでも、
威風堂々と周回しているときほど結果は思わしくなく、
入れ込み気味で、「これで本当に大丈夫かな」 と見えるときの方が、
好結果に結び付くことが多かったのです。
こんなダイタクヘリオスの性格を一言で表わせば、
“天邪鬼 (あまのじゃく)” ということになりますが、
馬名の由来となった太陽神ヘリオスも、
光と陰の双方を持ち合わせていたようで、
彼のダークサイドは、その娘である魔女キルケに受け継がれています。
キルケは気に入った男がいると、彼女がいる島に連れ込んで養うのですが、
飽きると、魔法で家畜に変えてしまったりするのです。
さて、G1マイルCSはダイタクヘリオスのほか、
1988、1989年に2、3着したホクトヘリオスがいて、
かつては太陽神ヘリオス絡みの馬が大活躍するレースでもありました。
ギリシャ神話における、ヘリオスの後任の太陽神がアポロン (Apollon)。
その意味では、今後のマイルCSにおける
現役馬エイシンアポロン (Eishin Apollon) の走りが、ちょっと楽しみです。
(次回は11月24日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉