偶蹄目ウシ科に属する生き物たちには、
哺乳類きっての “ブサイクちゃん” で知られるアメリカバイソンとか、
水面から面白フェイスをカポッと突き出すスイギュウとか、
見た目のインパクトが強烈な連中が、多数存在しています。
インド北東部やチベット地方、そしてブータンあたりに生息する
ターキン (Takin) も、そんな偶蹄目ウシ科の典型的な動物のひとつ。
短くて、太い四肢、顔から胴体を覆うモコモコとした体毛と貧相な尻尾、
湾曲した太い角と、ちょっと間が抜けたような顔立ち、
さらには、全身から漂わす独特の臭気といったものが、
ターキンの特徴となっているのです。
11番人気という低評価ながら、1992年のG1天皇賞・秋を、
凄まじい差し脚で勝利したレッツゴーターキンは、当然ながら、
偶蹄目ウシ科の変な生き物であるターキンとは、無関係です。
レッツゴーターキンの 「ターキン」 の綴りは英語で “Tarquin” 。
英語の呼びかけである “Let’s Go” に、
母ダイナターキンの “Tarquin” を結合させたものが、
天皇賞馬レッツゴーターキンの馬名の由来となっています。
ダイナターキンの母、つまりレッツゴーターキンの祖母にあたるのが、
1969年のオークスを制した名牝シャダイターキン (Shadai Tarquin) 。
シャダイターキンの母の馬名がブラックターキン (Black Tarquin) ですから、
レッツゴーターキンは、 “ターキン” の名を冠した4代目となるわけです。
ちなみに “Tarquin” は人名だそうで、
現在活躍中のジャズ、フュージョン系のミュージシャンに、
ブライアン・ターキン (Brian Tarquin) という人がいます。
ただし、「ターキン一族」 の祖であるブラックターキンは1954年生まれで、
前述のジャズミュージシャンと関連がないことは明白。
一体、どこの “Tarquin” さんが、ターキン一族の馬名の由来となったかは、
残念ながら不明でした。
さて、オークス馬シャダイターキンは、繁殖牝馬としても、
その牝系を大きく拡げています。
2009年のG2フローラSを制したディアジーナも、この一族の出身者。
馬名を訳せば、「親愛なるジーナ」 ということになりますが、
こちらのジーナ “Geena” は、
『テルマ&ルイーズ』 、『プリティ・リーグ』 などの映画で知られる
ハリウッドの名女優ジーナ・デイヴィス (Geena Davis) から
名付けられたそうです。
(次回は11月3日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉