「ミラバケッソ」 という造語が印象深い某大手繊維メーカーのCMで、
人気若手女優・成海璃子ちゃんと共演している生き物が、
モコモコとしていて、とても愛くるしいルックスのアルパカです。
ところが、このアルパカは、外敵から身を守るために、
物凄く臭い唾を吐きかけるという、
外見とは裏腹の、あまり可愛くはない生態も、持っていたりするのです。
それはともかく、アルパカは、南アメリカ大陸を原産とする、
ラクダの親戚である家畜種。
そして、“アルパカ” という言葉は、
アンデス地方に住むインディオたちが使う、ケチュア語から来ています。
ケチュア語は、13世紀に成立し、1533年にスペイン人によって滅ぼされた
インカ帝国の公用語になっていた、由緒ある言語でもあるのです。
インカ帝国の時代から、アンデス地方に住む人々にとっての大きな楽しみが、
“インティライミ” と呼ばれる祝祭。
“インティ” は、ケチュア語で 「太陽」、
“ライミ” が 「祭り」 という意味になります。
2005年春のG2京都新聞杯で重賞初制覇を飾り、
続くG1ダービーでディープインパクトの2着したインティライミは、
前述のケチュア語を馬名の由来としています。
このインティライミという馬名は、
お母さんであるアンデスレディーから連想されたもの。
アンデスレディーの産駒には、
2006年のG3福島記念、2007年のG3七夕賞を制したサンバレンティン、
中央競馬で6勝をあげ、OPクラス入りしたフォルクローレといった、
一流競走馬が出ていますが、
サンバレンティンは、アンデス山脈最高峰の山の名、
フォルクローレは南アメリカ大陸をルーツとする民俗音楽と、
インティライミ同様、母に因んだ馬名が付けられているのです。
さて、3歳春に大活躍したインティライミですが、
5歳初秋に充実期を迎え、G3朝日チャレンジC、G2京都大賞典を、
ともに自慢の末脚を爆発させて、鮮やかに連覇します
この時期のインティライミは、その馬名の通り、
まさに祝祭の真っ只中にいたのかもしれません。
そして、念願のG1タイトル制覇にもっとも近付いたのが、
6歳6月に出走した宝塚記念。
勝ったエイシンデピュティ、2着のメイショウサムソンから、
アタマ、クビ差という大接戦を演じ、0秒1差の3着に入ったのです。
この宝塚記念が行なわれた日の天気は、生憎の雨模様で重馬場。
切れ味勝負を得意とするインティライミには、
やや不利な馬場条件でもありました。
もしも、宝塚記念当日の天候が、ケチュア語の馬名にある
“インティ (太陽)” がいっぱいに降り注ぐ日であったならば、
5歳秋のときよりも、さらに盛大な “ライミ (祭り)” が、
仁川のターフで繰り広げられていたかもしれません。
(次回は10月13日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉