オペラの主役を務める女性のことを、
イタリア語でプリマドンナ (Prima Donna) と呼びます。
「20世紀最高のソプラノ歌手」 とも称されたマリア・カラスなどが、
代表的プリマドンナということになると思いますが、
競馬の世界でも、2000年のG1オークスを制した
シルクプリマドンナ (Silk Prima Donna) という
馬名に相応しい3歳女王が登場してきています。
“プリマドンナ” と同じ意味を持つイタリア語が、“ディーヴァ (Diva)”。
日本では、「歌姫」 という訳があてられ、
ここ10数年間、洋の東西を問わず、数多くの女性歌手に、
“ディーヴァ” という尊称が与えられてきました。
音楽界においては、いささか粗製乱造気味の “ディーヴァ” ですが、
競馬界の “ディーヴァ” と言えば、オセアニアのスーパーホース、
マカイビーディーヴァ (Makybe Diva) が、大きな存在感を放っています。
日本に遠征して出走した2005年のG1天皇賞・秋こそ、
実力を発揮できず、2番人気に推されながら7着に敗れましたが、
2003~2005年まで、史上初となるG1メルボルンC3連覇を達成、
2004/2005年、2005/2006年と
2季連続して豪年度代表馬にも選ばれています。
さらに、2010年には、豪競馬殿堂の “伝説賞” を受賞。
現在、繁殖牝馬生活に入っている
マカイビーディーヴァは、“生ける伝説” として、
今後の馬生を送っていくことになるのでしょう。
さて、マカイビーディーヴァという馬名ですが、
「マカイビー地方の歌姫」 という意味ではなく、
ある法則に従って導かれた造語を由来としているのです。
それは、マカイビーディーヴァのオーナーが経営する
水産会社で働く5人の女性社員の名前から生まれたものでした。
すなわち、Maureenの 「ma」、Kylieの 「ky」、Belindaの 「be」、
Dianaの 「di」、Vanessaの 「va」と名前の頭2文字を繋げて、
「Makaybe Diva」 という馬名が完成したわけです。
抜群のチームワークを誇る女性たちのパワーが結集した
マカイビーディーヴァ。
まさに、“伝説の名牝” に相応しい、馬名の持ち主だと思います。
(次回は9月29日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉