1990年の第51回オークスは、
桜花賞を制し、牝馬2冠を目指すアグネスフローラが、
圧倒的な1番人気に推されていました。
好位から抜け出してくる、正攻法の競馬を展開した
アグネスフローラでしたが、ゴール前で大外から追い込んできた
5番人気の伏兵エイシンサニーに4分の3馬身差交わされてしまいます。
エイシンサニーの勝ちタイム2分26秒1は、
当時のオークスレースレコード。
非常にレベルの高かった、第51回オークスは、
記録と記憶の両方に残る、歴史的な一戦となりました。
このオークスに15番人気で臨み、
7着に健闘したハービンガーという牝馬がいます。
オークス以降に重賞を制覇した訳でも、
繁殖牝馬として成功した訳でもないので、
多くの競馬ファンの記憶からは消え去ってしまったかもしれませんが、
4代母に1957年の牝馬2冠馬ミスオンワードを持っていたり、
叔父さんが、G2重賞を3勝し、G1ダービー、G1菊花賞で
ともに2着した芦毛の個性派名馬スダホークだったりと、
オークスの好走が肯ける血統的背景を持つ馬でもあったのです。
さて、このハービンガー、馬名を英語で書くと “Harbinger” 。
そう、前年からの重賞3連勝で臨んだ
2010年のG1 Kジョージ6世&QエリザベスSで、
レース歴代最大着差となる11馬身差の圧勝を飾った
ハービンジャー (Harbinger) とは、まったく同じ表記となるわけです。
ハービンガー、ハービンジャー、この2頭の馬名を日本語に訳すと 「先駆者」。
ゴールまで残り2Fの地点で先頭に立つと、
そのまま後続を引き離すだけ引き離した、
ハービンジャーの “Kジョージ” での走りは、
馬名通り、競馬の新時代を切り開いていくような迫力がありました。
“Kジョージ” 大勝の1カ月後、
左前脚を骨折したハービンジャーは、残念ながら現役を退きましたが、
来春から社台SSで種牡馬供用されるという、
ビッグニュースが飛び込んできました。
日本の牝馬ハービンガーは、繁殖入りした産駒を残せず、
血脈を繋げませんでしたが、
種牡馬ハービンジャーには、
21世紀前半の日本生産界をリードする 「先駆者」 として、
その血を大いに広げて欲しいものです。
(次回は9月22日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉