犯罪に手を染めたり、反社会的な行動を取ったりする、
いわゆる “アウトロー” のなかには、
大衆からの熱狂的な支持を集める 「義賊」 と呼ばれる人々がいます。
例えば、不正な蓄財をしている権力者から奪った金を
生活苦にあえぐ庶民に配った、江戸時代の鼠小僧、
盗賊の頭領にして弓の名手、さらには王の暴政への反逆者でもあった
中世イギリスのロビン・フットらは、
「義賊中の義賊」 とも呼べる、ヒーロー像を確立しています。
(ちなみに、鼠小僧は実在の、ロビン・フッドは創作上の人物です)
スコットランド地方の義賊として有名なのが、
17世紀後半から18世紀初頭に活躍した、
ロバート・ロイ・マクレガー (Robert Roy MacGregor)、通称 “ロブ・ロイ” 。
スコットランドで質素に生活する一族の長だったロブ・ロイは、
卑劣な手口で、仲間や家族を死に追いやった、
領主であるイングランド貴族に対する反乱を決行したのです。
このロブ・ロイの伝説は、
スコットランドの著名な作家ウォルター・スコットの手で小説となり、
『ロブ・ロイ/ロマンに生きた男』 のタイトルで映画化もされています。
映画のなかで、ロブ・ロイを演じたのは、
アイルランド出身の名優リーアム・ニーソン。
また、スコッチ・ウイスキーをベースにしたカクテルにも、
この義賊の名をとった、 “ロブ・ロイ” という飲み物が存在します。
天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念とG1競走を3連覇し、
2004年年度代表馬に選ばれたゼンノロブロイは、
オーナーの冠名である 「ゼンノ」 に、
前述のスコットランドの英雄 「ロブ・ロイ」 が加わった馬名です。
日本競馬界のヒーローとなったゼンノロブロイは、
馬名の由来となった義賊が反乱の相手としたイングランドに遠征し、
G1インターナショナルSに参戦しました。
結果は、エレクトロキューショニストのクビ差2着でしたが、
因縁の地イングランドにおけるゼンノロブロイの素晴らしい走りは、
十分に 「反乱成功」 と評価できるものだったと思います。
種牡馬となったゼンノロブロイは、
これまでに2頭のG1勝ち産駒を出していますが、
オークスを制したサンテミリオンが5番人気、
ジャパンダートダービーを勝ったマグニフィカが6番人気と、
いずれも伏兵評価での勝利でした。
あるいは、ややスケベな下心を持つ中穴党競馬ファンにとって、
種牡馬ゼンノロブロイは、
馬券的中をもたらしてくれる 「義賊」 なのかもしれません。
(次回は7月28日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉