フランス南西部、ジロンド県全域で作られたワインには、
世界的超有名ブランドである “ボルドー・ワイン” を
名乗る権利が与えられます。
県庁所在地であるボルドー郡をはじめ、
ジロンド県は6つの大きな郡で形成されているのですが、
そのなかのひとつに、リブルヌ郡という地域があります。
リブルヌ郡に属する、人口2,500人足らずの小さな街が、
サンテミリオン(Saint-Emilion)。
ここで作られる、シャトーオーゾンヌ(Ch.Ausone)や、
シャトーシュヴァルプラン(Ch.Cheval-Blanc)は、
熟した果実の香りと芳醇でまろやかな味わいを特徴としていて、
いずれも、ボルドーの “赤” を代表する名品として知られているのです。
サンテミリオンは、ワインの生産だけでなく、
景観の素晴らしさでも、よく知られています。
サンテミリオンなど8つの市町村からなる “サンテミリオン地域” は、
丘の上に連なる中世風の建築物と、
その周辺に広がるワイン畑からなる絶景が高く評価され、
ユネスコの世界遺産にも指定されているのです。
2010年のG1オークスを、アパパネと同着で制したサンテミリオンは、
前述の南西フランスの小さくて美しい街を、馬名の由来としています。
おそらく、その母であるモテック(Moteck)が
フランスで生まれ、当地で走ったことから、
サンテミリオンという馬名が連想されたのでしょう。
さて、ワインの原材料であり、われわれが食すことも多い葡萄は、
果実の部分ということになります。
当然、実がなるためには、花が咲くわけですが、
葡萄の花は、米粒ほどのつぼみから、
おしべがニョキニョキと突き出す構造となっている、
ちょっとびっくりするくらいに、小ぶりなものです。
その貧相な花から、果汁を湛えて、丸々と太った葡萄の実が成ることは、
「これぞ自然の神秘」 と呼ぶに相応しい事象だという気もします。
競走馬サンテミリオンも、フラワーC、
フローラ(Flora=英語で植物、花の意味)Sという、
花に関連した名前の重賞レースを使いながら、
徐々に地力を蓄えていきました。
そして、 “樫の木 (=Oaks、オークス)” に、大きな実を成らせたのです。
(次回は7月21日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉