『プラトーン』 、『7月4日に生まれて』 、『JFK』 などで知られる、
米の社会派映画監督オリバー・ストーンの作品に、
『エニー・ギブン・サンデー(Any Given Sunday)』 という力作があります。
弱小チームのヘッドコーチとなった、かつてのスター選手の悲哀、
そこに登場した救世主とも呼べるシンデレラ・プレーヤーの高慢と孤立、
自らのビジネスにチームを利用しようとするオーナーの娘・・・。
米でナンバー1の人気を誇るプロスポーツ、
アメリカンフットボールの内幕をシビアに描いたこの作品は、
アル・パチーノ、デニス・クエイド、キャメロン・ディアスら
豪華キャストの熱演もあり、
なかなかに見所の多い映画となっています。
タイトルの 『エニー・ギブン・サンデー』 を訳せば、
「すべてを与えてくれる日曜日」 。
映画のクライマックスとなる、
チームのプレーオフ進出が懸かった試合のことを
(NFLの試合は、基本的に毎週日曜日に行なわれます)、
いく分文学的に表現したのが、この作品名というわけです。
競馬の世界にも、映画のタイトルと同じ馬名を持つものがいます。
それは、競走には不出走で、豪で種牡馬となった
エニーギヴンサンデー(Any Given Sunday) 。
日本でサンデーサイレンスの種を受けた母が、
豪に帰って出産したエニーギヴンサンデーは、
種牡馬として1シーズン供用されただけでしたが、
その数少ない産駒から、豪G1クイーンズランドオークス、
豪G1クイーンズランドダービーを制したリヴァサンを送り出しました。
“エニーギヴンサンデー” という馬名は、
オリバー・ストーンの映画に影響されたわけではなく、
父の名をとって付けられたものだと思われます。
「すべてを与えてくれる父サンデーサイレンス」 。
その馬名通り、父の血を見事に活かしたエニーギヴンサンデーは、
大きな仕事を成し遂げて、豪競馬史に、その名を留めたのです。
もう一頭、ちょっと近い馬名を持つのが、米G1馬で、
現在は種牡馬となっているエニーギヴンサタデー(Any Given Saturday) 。
「すべてを与えてくれる土曜日」 という馬名は、
米3冠競走を筆頭に、米競馬の大レースの多くが、
土曜日に開催されることに由来しています。
ところが、エニーギヴンサタデーにとって唯一のG1勝ち鞍となった
ハスケル招待Hは、2007年8月5日に
ニュージャージー州モンマス競馬場で行なわれたものでした。
ちなみに、8月5日は土曜日ではなくて日曜日。
映画のフットボールチームや、豪の種牡馬と同じように、
エニーギヴンサタデーにとっても、
「すべてを与えてくれた」 のは、“サンデー” だったわけです。
(次回は7月7日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉