2009年6月25日にこの世を去った、
“King of Pop” ことマイケル・ジャクソンが、
兄弟たちと組んでいたユニットが、ザ・ジャクソンズ。
ザ・ジャクソンズは、かつてジャクソン5というグループ名でしたが、
彼らが、モータウンレコードからCBSに移籍する際のゴタゴタで、
旧グループ名が使えなくなり、
ある意味、やむを得なく、このグループ名に変更されたのでした。
ところが、1980年に発表された
アルバム 『トライアンフ(Triumph)』 のビッグヒットによって、
ザ・ジャクソンズの知名度は、音楽ファンの間で一気に高まります。
“トライアンフ” を日本語に訳すと「凱旋」。
グループの中心であるマイケルは、
前年の1979年に、クイーンシー・ジョーンズをプロデューサーに迎えた、
ソロアルバム 『オフザウォール(Off the Wall)』 を大成功させ、
自信に満ち溢れていた時期でもあったのですが、
ホームグランドであるザ・ジャクソンズに戻り、
ニューアルバムを創るときの気分は、
まさに、 『トライアンフ』 というタイトル名通りの、
昂揚感を覚えていたのではないでしょうか。
翌年行なわれた 『トライアンフツアー』 と銘打たれたコンサートツアーも、
大盛況のうちに終えたザ・ジャクソンズは、
そのキャリアのピークを迎えたのです。
(その後、マイケルがソロ活動に専念したため、
ザ・ジャクソンズは解散へと追い込まれました)
この “トライアンフ” という言葉を馬名に持つのが、
2009年のG1皐月賞で2着、2010年のG1安田記念で4着した
現役の強豪トライアンフマーチ(Triumph March)です。
その母で、G1桜花賞を制した名牝キョウエイマーチ(Kyoei March)とは、
“マーチ=行進曲” で繋がっているトライアンフマーチですが、
この馬名は、1871年にエジプトの首都カイロで初上演された
オペラ 『アイーダ』 で演奏される “凱旋行進曲” に由来しています。
イタリアの作曲家ヴェルディの手による “凱旋行進曲” は、
男女二部合唱やトランペット隊による演奏を交えながら、
勇壮でドラマチックなメロディラインをオーケストラが紡いでいく、
名曲中の名曲。
フジテレビのサッカー中継のBGMとして、
その旋律をご存知の方も多いかもしれません。
『アイーダ』 は、古代エジプト時代のエチオピアとの戦争、
それによって引き裂かれた男女の悲恋を描いていますが、
競走馬トライアンフマーチも、これまでに重賞2着3回と、
なかなかタイトルを獲得できない、悲運が付きまとっています。
いまは亡き、母キョウエイマーチの墓前に、喜びの報告をするためにも、
重賞競走を先頭でゴールして、競馬ファンのもとへ 「凱旋」 してくる、
トライアンフマーチの勇姿を、そろそろ見たいもの。
ザ・ジャクソンズの 『トライアンフ』 のようなピークが、
トライアンフマーチのもとにも訪れることを、大いに期待しましょう!
(次回は6月30日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉