日本競馬界を代表するオーナーブリーダーであるメジロ牧場。
その最高のヴィンテージイヤーともいえるのが、
3頭のG1馬が出た、1987年生まれの馬たちです。
この黄金世代のなかで、最初に頭角を顕したのが、
3歳3月のG2弥生賞で重賞初制覇を飾ったメジロライアンでした。
3歳時には、G1皐月賞3着、G1ダービー2着、
G1菊花賞3着、G1有馬記念2着と、
後一歩で大魚を逃し続けたメジロライアンですが、
4歳6月に宝塚記念を勝ち、
ついに念願のG1ウイナーの仲間入りを果たしたのです。
1990年のG1菊花賞でメジロライアンを降して勝利し、
一躍スターダムに駆け上ったのが、メジロマックイーン。
その後も4、5歳時の天皇賞・春、6歳時の宝塚記念と
G1タイトルを4つ積み重ねたメジロマックイーンは、
「日本競馬史に残る名馬中の名馬」 と称えられる存在になりました。
遅れてきた大物が、5歳春のG3新潟大賞典で初重賞勝ちを記録し、
直後のG1宝塚記念、同年暮れのG1有馬記念と
グランプリ連覇を達成したメジロパーマーでした。
4歳秋には、活路を切り開くため、障害レースにも出走した
苦労人メジロパーマーは、「メジロ牧場第三の男」 として、
シブい輝きを放ったのです。
さて、メジロ牧場(メジロ商事)の持ち馬たちには、
毎年共通したテーマに基づく馬名が付けられています。
この1987年生まれの馬たちの場合は、「海外の有名人」。
メジロマックイーンは、映画 『大脱走』、
『タワーリング・インフェルノ』 などで知られる
米の大スター俳優スティーブ・マックイーン (Steve McQueen) から
名付けられていますし、
メジロライアンは、カリフォルニア・エンゼルスなどで大活躍した、
大リーグの速球王、ノーラン・ライアン (Nolan Ryan) が、
馬名の由来となっています。
そして、メジロパーマーは、マスターズを4勝した名ゴルファー、
アーノルド・パーマー (Arnold Palmer) に因んで、馬名が付けられました。
もちろん、この輝かしい1987年生まれの同期生のなかにも、
競走馬として大成できなかった馬たちがいます。
メジロマックイーンと同じく、米の人気俳優の名を冠した
メジロマーフィー (エディ・マーフィ “Eddie Murphy” から命名) は、
4戦して未勝利でしたし、
メジロライアン同様、米プロスポーツ界のスーパースターが
馬名の由来となったメジロタイソン (ボクシング世界ヘビー級王者
マイク・タイソン “Mike Tyson” から命名) も6戦して未勝利、
2ケタ着順が4回という成績で現役を退いています。
また、メジロパーマー同様、著名なプロゴルファー、
グレッグ・ノーマン “Greg Norman” から名付けられた
メジロノーマンは、1戦して8着というキャリアだけで、
その競走生活の幕を閉じました。
あるいは、競馬の世界における成功と失敗は、
本当に紙一重のことなのかもしれません。
ですが、その間には、容易には超えられない、
とてつもなく深い溝が、横たわっているのも事実でしょう。
黄金世代と呼ばれる、メジロ牧場の同期生のなかにも、
競馬の世界を形作る大きな要素である、「光と陰」 は、
厳然として存在していたのです。
(次回は5月5日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉