たとえば、朱鷺やニホンカモシカ、あるいはトガクシショウマのような、
日本国内でしか生存していない動植物を
「日本の固有種」 と呼びます。
隔絶された環境におかれる島国では、
大陸に位置する国々よりも、固有種が発生しやすいとも言われています。
多数の島と環礁から成り立っているハワイ諸島にも、
この土地でしか見られない 「固有種」 が数多く存在します。
スズメ目アトリ科のハワイミツスイ属も、そのひとつ。
ハワイミツスイ属は20数種類の鳥たちから成り立っていますが、
そのなかでもっとも数が多いのが、アカハワイミスツイです。
アカハワイミツスイの大きさは10~20センチぐらい。
簡単に説明すると、
鮮やかな赤色をしたスズメみたいな小型の鳥ということになります。
主に、森林部に生存するアカハワイミツスイですが、
南国特有の草木が生い茂る森のなかを飛び交う、その真っ赤な姿は、
ハワイ名物のひとつとなっています。
このアカハワイミツスイをハワイの言葉で
「アパパネ(‘Apapane)」と呼びます。
2009年のG1阪神JFを制し、JRA最優秀2歳牝馬にも選ばれた
アパパネは、アカハワイミツスイを指す現地の呼び名が、
そのまま馬名となっています。
アパパネの父キングカメハメハ(King Kamehameha)は、
18世紀後半から100年弱に渡り、ハワイ王国を統治した
カメハメハ王朝の初代国王、カメハメハ1世(大王)が、その名の由来。
つまり、父の馬名から連想される、
同じハワイを象徴するものとして、“アパパネ” という、
インパクトがあり、なおかつ素敵な響きを持つ馬名が、
2007年に生まれた、母ソルティビットの牝駒に付けられたわけです。
鳥の方のアパパネは、TPOに応じた、
多彩な鳴き声を持つことでも知られています。
競走馬のアパパネは、現在のところ、
マイラー色が濃いタイプとも言われていますが、
アパパネの鳴き声同様、オークスに向けての距離延長にも、
器用に対応してくれるような気がしています。
(次回は3月24日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉