1997年に中国へ返還された香港もそうでしたが、
イギリスは、世界各地に海外領土を持っています。
これは、「7つの海を制した」大英帝国が繰り広げてきた、
植民地政策の名残でもあるわけです。
いまだ、イギリスが海外領土として保有しているのが、
大西洋と地中海を繋ぐ、海の要衝であるジブラルタル。
位置的には、スペインに属することが自然と思えるジブラルタルですが、
スペイン継承戦争を終結させるために、
1713年に結ばれたユトレヒト条約によって、
戦勝国であるイギリスの領土となりました。
石灰石でできた岩山(THE ROCK)に覆われた、
この土地を馬名の由来としているのが、
2歳時の仏グランクリテウムから、
3歳時のムーランドロンシャン賞まで、
G1戦7連勝という世界記録を打ち立てた超一流マイラーで、
「ザ・ロック」の愛称で世界中の競馬ファンに親しまれている
ロックオブジブラルタル(ROCK OF GIBRALTAR)です。
現在は、自前の議会を持つ自治都市となっているジブラルタルですが、
隣接するスペインは、いまもなお、領有権を強く主張しています。
ロックオブジブラルタルも、その現役引退、種牡馬入りの際に、
共同馬主であった “クールモアスタッド” の総帥ジョン・マグナー氏と、
その友人で、英プレミアリーグの名門
マンチェスターユナイテッド監督である
アレックス・ファーガソン氏との間で、
所有権を巡る訴訟沙汰が起きています。
後に、両者の間で和解が成立しましたが、
マグナー氏とファーガソン氏の仲は、
以前のような親密さを取り戻せていないまま、と言われています。
ジブラルタルは、チャールズ皇太子とダイアナ妃が、
新婚旅行で訪れた場所でもありました。
このロイヤル夫妻が、その後に辿った運命も併せて考えてみると、
このジブラルタルという土地は、
「争い事」や「決別」という言葉との縁が深いのかもしれません。
(次回は2月17日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉