出走14頭中12番人気という低評価を覆し、
1998年香港国際Cでレコード勝ちを飾った日本馬が、
河内洋騎乗のミッドナイトベット(MIDNIGHT BET)です。
この「深夜の賭け事」という馬名の由来は、
ひとつには、母CATHERIE’S BET( “キャサリンの賭け” )の名に
因んだものと思われますが、
もうひとつ、父ハウスバスター(HOUSEBUSTER)が持つ言葉の意味も、
大きく絡んでいるのです。
“ハウスバスター” を直訳すれば、
「家を破壊する人」ということになりますが、
この単語は、「カジノを倒産させる人」という意味で
使用されることもあるのです。
「カジノを倒産に追い込むような、深夜の賭け事」。
ハウスバスターとミッドナイトベット父仔の馬名を繋げてみると、
破壊的でありながら、どこかロマンチックな雰囲気も漂ってくるわけです。
話を、ミッドナイトベットが勝利した香港国際Cに戻しましょう。
このとき、ミッドナイトベットの漢字表記が、「午夜博彩」。
ちなみに、 “東洋のカジノ王” と称され、
香港の名馬ヴィヴァパタカのオーナーとしても知られる
スタンレー・ホー氏が率いる、
マカオのカジノを運営する会社には、
『澳門(マカオ)博彩』という社名が付けられています。
スタンレー・ホー氏が経営するリスボアホテルを含め、
マカオのカジノでは、香港で行なわれる競馬の馬券も扱っています。
おそらく、1番人気に推されていた
地元香港の大スターホース、ヨハンクライフの追撃を抑え、
人気薄の日本馬ミッドナイトベットが先頭でゴールしたとき、
肝を冷したカジノ関係者も少なからず存在したはずです。
もしも、43倍の配当が付いた、ミッドナイトベットの単勝馬券を、
大量に購入している客がいたとしたら、
カジノ倒産とまではいかないものの、
かなりの痛手を被ることは、間違いないのですから。
(次回は2月3日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉