2006年の菊花賞馬で、
2010年夏から、その初産駒がデビューする予定のソングオブウインド。
“ソングオブウインド Song of Wind” を訳せば、“風の歌” となり、
事実、ソングオブウインドが香港ヴァーズに出走した際には、
“風之歌” という漢字名が当てられました。
さて、“ソングオブウインド = 風の歌” という馬名の由来となったのは、
現代日本きっての人気作家であり、
ノーベル文学賞候補とも言われる、村上春樹氏の処女長編作
『風の歌が聴こえる』 からだそうです。
ソングオブウインドの母の名は “メモリアルサマー = 思い出の夏”。
『風の歌が聴こえる』 で描かれているのも、
8月8日から8月26日の19日間に、
21歳の大学生である主人公 “僕” の周囲で起きた、
真夏の出来事なのです。
勝手な推測ではあるのですが、
母馬の名前から、村上氏の小説を連想して名付けられたのが、
ソングオブウインドという馬名なのではないでしょうか。
村上氏の小説のタイトルには、
『ダンス・ダンス・ダンス』
(ビーチボーイズのヒットソング名に由来しているそうです)という、
1991年フラワーCで2着し、牡馬勢に挑んだ皐月賞でも5着に健闘した、
競走馬ダンスダンスダンスを想起させるものもあります。
もっとも、この小説タイトルから、
馬の方のダンスダンスダンスを思い浮べるのは、
かなりディープな競馬ファンだけでしょうが・・・。
さて、今夏からデビュー予定の種牡馬ソングオブウインド産駒に、
ほかの村上氏の小説タイトルに因んだ、こんな馬名はどうでしょう。
『国境の南、太陽の西』 から、
“サウスオブボーダー” あるいは “ウエストオブザサン”、
『海辺のカフカ』 から、
“カフカオンザショア”
『アフターダーク』 から、
そのまま “アフターダーク”(母父がダンスインザダークならバッチリ)・・・。
空前の大ヒットとなった 『1Q84』 にあやかり、
“イチキュウハチヨン” とストレートに名付けるのもアリかと思いますが、
あまり強そうには感じられない、
なんだか未勝利で終りそうな馬名だという気もします。
(次回は1月27日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉