1970年代に大活躍したカーペンターズ、ピーター・フランプトン、
“King of Pop” マイケル・ジャクソンの妹であり、
自らも大ヒット曲を連発しているジャネット・ジャクソン
そして、現代屈指の歌姫であるシェリル・クロウといった
人気アーティストを多数抱えているアメリカの名門レーベルが、
1962年に設立された “A&M Record” です。
このレーベル名は、
「A=Herb Alpert-ハーブ・アルパート」、
「M=Jerome Moss-ジェリー・モス」という、
ふたりの創設者の名前からとられています。
ハーブ・アルパートはトランペッター
(『オールナイト・ニッポン』のオープニングテーマを演奏しているのが、彼です)、
そしてジェリー・モスは音楽プロデューサーが本業なのですが、
ジェリー・モスは、ある超大物競走馬の馬主としても有名です。
ジェリー・モスが所有しているのは、
ラストランとなった2009年ブリーダーズCクラシックを快勝し、
14戦無敗の戦績で現役生活を退くことになった
米競馬界の歴史的な女傑ゼニヤッタ(Zenyatta)。
ちなみに、この “Zenyatta” という単語は、英語の辞書には載っていません。
馬名の由来となったのは、1980年代のA&Mレコードの屋台骨を支えた、
スティング率いる3人組のロックバンド、ポリスが1980年にリリースした
大ヒットアルバム “Zenyatta Mondatta(ゼニヤッタ・モンダッタ)”
からと言われています。
「ゼニヤッタ・モンダッタ」というアルバムタイトルの意味に関しては、
発売当初から、様々な説が飛びかっていて、
日本語の「銭やった、揉んだった」
(いまひとつ、状況が分かりにくい言葉の並びではありますが・・・)
に由来しているという、無茶苦茶な意見も出ていました。
正解は、フランス語を基にした造語で、「世界を支配する3人」
という意味なのだそうですが、
まさか、6万ドル(約600万円)という安値で購買し、
デビューも3歳11月と遅れに遅れたゼニヤッタが、
「競馬の世界を支配する女傑」になるとは、
商才に優れた名プロデューサー、ジェリー・モスも、
まったく予想していなかったのではないでしょうか。
(次回は12月30日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉