20世紀初頭に、アメリカ南部のニューオリンズを中心に発展した音楽に、
ディキシーランド・ジャズ “Dixieland Jazz” というものがあります。
ブラスバンドが演奏するマーチ、フランスから伝わったラグタイム、
アメリカの黒人音楽であるブルースなどが融合した
ディキシーランド・ジャズは、
ギター、ドラムス、コントラバズなどからなる
リズム・セクションをバックに、
トランペットやクラリネットが
メロディーラインを奏でていくスタイルが一般的で、
かの有名な 『聖者の行進 “When the Saints Go Marchin’ In』 は、
この分野を代表する名曲のひとつとなっています。
ディキシーランド・ジャズを馬名の由来としているのが、
1999年に日本で生まれた牝馬であるディクシージャズ “Dixie Jazz”。
4戦して未勝利、2着1回と、競走馬としては大成できなかった
ディクシージャズですが、繁殖入りして、
2011年のG3シンザン記念、G3毎日杯を連覇している
現役馬レッドデイヴィス “Red Davis” を産む、
大きな仕事を成し遂げています。
レッドデイヴィスという馬名は、母の名から連想された、
ジャズ界の巨人マイルス・デイヴィス (Miles Davis) に因んでいます。
1926年にアメリカ合衆国イリノイ州に生まれ、
1991年に65歳で亡くなったマイルス・デイヴィスは、
クール、ビバップ、フュージョン、ヒップポップといった、
時代の先端を行く音楽を柔軟に取り入れ、
ジャズという音楽分野を飛躍的に進歩させました。
そして、かのタモリさんも大ファンという、
繊細で、美しく、エモーショナルな、そのトランペット演奏は、
「マイルスのトランペットが本当に泣いている」 とも評される、
聞く者のハートを鷲掴みにしてしまう、
圧倒的な素晴らしさを誇っています。
去勢された、せん馬ゆえに、クラシックレースや天皇賞など、
出走できないG1レース、重賞レースも多数あるレッドデイヴィス。
当然、今後も、あまり前例のない競走生活を
歩んでいくことになりそうですが、
進取の精神を持ち、音楽の世界で “ワンアンドオンリー” な存在となった
マイルス・デイヴィスのように、
個性的で煌びやかなスター街道を歩んで欲しいところです。
(次回は4月20日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉