馬名ミュージアム カタカナで9文字以内アルファベットで18文字以内と定められている競走馬たちの名前。この短い言葉のなかにその馬に関わる人々の希望や祈り、そして、いにしえのホースマンが紡いできた物語を感じとることができるのです。

第5回 「切れ味の鋭さ、この聖剣に如くものなし」

前回のシーザリオもそうですが、
その馬名を付けたからこそ、名前に相応しい名馬が誕生したとしか思えないケースが、
競馬の世界では起こり得るのです。

マイルCS連覇、スプリンターズSと、G1タイトルを3つ獲得し、
2003、2004年のJRA最優秀短距離馬に選出されたデュランダルも、
競馬の世界でときに起こり得るマジックを体現した一頭です。

デュランダル(DURANDAL)とは、12世紀初頭に成立したと言われる、
古フランス語で書かれた叙事詩『ローランの歌(LA CHANSON DE ROLAND)』の
主人公ローランが使用する聖剣の名です。

『ローランの歌』では、
ローランが属するフランク王国の当主シャルルマーニュ(=カール大帝)が
天使から遣わされた剣=デュランダルを、
フランク王国十二勇将の一人であるローランに授けることとなるのです。

ローランは、スペインのイスラム王国サラゴサとの戦争のなかで、
数々の武功を打ち立てるのですが、
聖剣デュランダルは、ローランにとって欠かすことのできない最強アイテムでした。

分かりやすい例で言えば、デュランダルは、
RPGゲーム『ファイナルファンタジーシリーズ』に登場する
聖剣エクスカリバーみたいなものだったわけです。

『ローランの歌』のなかに、こんな記述があります。

「切れ味の鋭さデュランダルに如くものなし」。

まるで、末脚勝負に賭けて、
4角最後方から鋭く追い込んでくる競走馬デュランダルのことを、
そのまま描写したような文章です。

ちなみに、デュランダルと並ぶ戦士ローランの強力な武器が愛馬ブリリアドロ。
もしかすると、今後デビューしてくるデュランダル産駒のなかに、
ブリリアドロという馬名を持つ若駒が登場してくるかもしれません。

(次回は12月23日の水曜日にお届けします)  構成・文/関口隆哉