7月のアスコット競馬場を舞台として行われるビッグレース、
G1キングジョージ6世&クイーンエリザベスSは、
映画 『英国王のスピーチ』 の主役となった英国王ジョージ6世と、
その妻であるエリザベス王妃の名を冠した競走です。
このジョージ6世の兄で、前の英国王でもあった人物が、エドワード8世。
1936年1月、亡父ジョージ5世の後を継いで
英国王に就任したエドワード8世ですが、
就任直後から、年上のアメリカ人女性との不倫が大問題となります。
結局、この 「王冠を賭けた恋」 が原因で、
エドワード8世は、わずか11カ月足らずの在位で、
英国王の座を退くことを余儀なくされました。
退位後のエドワード8世は、フランスに渡り、
1937年3月から、1972年5月に亡くなるまで、
「ウィンザー公爵 “The Duke of Windsor”」 の名で呼ばれることになります。
ネクタイの結び方のひとつで、
結び目に大きな三角形ができることが特徴となる
ウィンザーノット “Windsor Knot” は、
ウィンザー公が好んだネクタイの締め方に由来していると言われています。
(ちなみにウィンザー公自身は、この説を否定しているそうです)
父に日本の大種牡馬パーソロン、母に凱旋門賞を制したサンサンを持つ、
1980年に生まれた超名血牡馬には、
前述のウィンザー公に由来したネクタイの結び方が
馬名として与えられます。
当然、競走馬として大きな期待が賭けられたウィンザーノットですが、
出世が遅れ、クラシックレースには出走できませんでした。
本格化したのは3歳秋以降、
そして4、5歳時のG3函館記念で連覇を飾っています。
結局、6歳時の天皇賞・秋2着、
5歳時の宝塚記念、天皇賞・秋でともに3着と
G1タイトルには手が届かなかったウィンザーノットですが、
中距離戦向きの小気味良いスピードを武器とする、
競馬ファンの心に深く残る強豪馬ではありました。
種牡馬となったウィンザーノットの代表産駒が、
1994年のG2セントライト記念を勝った
ウインドフィールズ “Wind Fields”。
(この馬名はカナダの大生産者E・P・テイラー氏が開いた牧場に由来しています)
しかし、ウインドフィールズもまた菊花賞4着など、
G1タイトルには縁がないまま、現役を退きます。
ウィンザーノット、ウインドフィールズ親仔ともに、
強さと脆さが同居するような競走馬でしたが、
勝利への執念がいまひとつ不足していたのは、
英国王の座をあっさりと捨て去った、ウィンザー公が、
父の馬名のルーツとなっていたからかもしれません。
(次回は7月27日の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉