ラジオ番組のパーソナリティーが、
台本を用意せず、思いのままにしゃべる時間帯を、
「フリートーク」 コーナーと呼んだりします。
例えば、伊集院光氏の深夜ラジオ番組は、
このフリートークが抜群に面白かったりするわけです。
競馬の世界にも、フリートーク “Free Talk” という名を持つ、
1985年に生まれた強豪牝馬がいます。
3歳となった1988年1月にデビューしたフリートークは、
4戦目となるG3フラワーCで重賞初制覇。
続く牝馬クラシックレースでも、有力馬の一頭と見なされていましたが、
G1桜花賞はアラホウトクの3着、
G1オークスはコスモドリームの4着に終わりました。
秋を迎え、10月のG3クイーンSで重賞2勝目を記録。
ところが、G1エリザベス女王杯を目指しての調教中に転倒、
膝を痛めて、そのまま現役を退くことになってしまったのです。
悲運の名牝とも呼べるフリートークですが、その馬名は、
母ダイナフリートの 「フリート」 の部分から連想されたものだそうです。
おそらく、母のフリートは、「俊足の」 という意味を持つ、
英語の形容詞 “Fleet” に由来していると思われ、
それに 「―」 と 「ク」 を付けて、まったく別の意味にしてしまうのは、
あまりにも強引という気がします。
まあ、“フリートーク” というネーミング自体は、
覚えやすいうえに、インパクトもあり、
とてもいい馬名だとは思うのですが…。
繁殖牝馬となったフリートークは、
あまり仔出しのいいタイプではありませんでしたが、
競走馬となった2頭の産駒のうちの一頭が、
5連勝を含む計7勝をあげ、
G2阪神牝馬特別、G3マーメイドSで、いずれも2着した
強豪牝馬シングライクトーク “Sing Like Talk” だったのです。
母の名から連想され、「語るように歌え」 という意味を持つ
シングライクトークという馬名は、
母を上回る素敵なものだと思います。
現在、繁殖牝馬入りしているシングライクトークは、
ともにG3フラワーCで3着した娘である、
シングライクバード“Sing Like Bird”、
セイレーンズソング“Seiren’s Song”などを送り出す、
なかなかの活躍を示しています。
「鳥のように歌え」、「妖精の歌」という娘たちの馬名もカッコいいもの。
フリートークから連なる一族の馬名は、是非今後も、
「ステキ路線」をまっしぐらに進んでいってもらいたいものです。
(次回は8月17の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉