2011年02月10日
こんにちは。
せん馬レガシーワールドの数奇な生涯をお話ししています。
彼はリファール系モガミとリボー系ジムフレンチ牝馬という血統、
父母系ともに当時は “気性難” の代表にように言われていた配合です。
戸山為夫調教師の決断でせん馬として再スタートした彼は、
見違えるような集中力を発揮するようになり、
セントライト記念制覇、ジャパンC4着、有馬記念2着と
3歳馬としては上々のシーズンを過ごしました。
しかし年明けに骨折して再び長い休養に入ることになります。
休養中に戸山調教師が亡くなるという悲運が彼を見舞います。
同厩の同期で二冠馬ミホノブルボンも早々と引退していました。
レガシーは戸山師の弟子筋の森秀行厩舎に転厩し、
心機一転、鞍上に河内洋騎手を迎えて秋に臨みます。
ジャパンCは強力なメンバーが揃いました。
コタシャーンは前走でBCターフを勝ち勢い盛んです。
ホワイトマズルは最強の凱旋門賞馬ダンシングブレーヴ産駒、
前走の凱旋門賞ではクビ差で親仔制覇を逃し雪辱に燃えます。
同じリファール系でもこちらがはるかに格上でした。
そのホワイトマズルを競り負かしたアーバンシー、
後にガリレオ、シーザスターズの母となる名牝の姿も見えます。
アメリカの芝チャンピオン・スターオブコジーン、
ドイツの王者プラティニと一癖も二癖もありそうな顔ぶれです。
ちなみにプラティニは昨年のダービー馬エイシンフラッシュの
母の父として久しぶりにその存在を強調してくれました。
日本勢の大将格はダービー馬ウイニングチケットです。
この強力メンバーを相手にレガシーワールドは
メジロパーマーがつくる緩みのないペースの2番手を進みます。
直線でケント・デザーモ騎手のコタシャーンが猛然と追い込み、
先頭に立ったレガシーを飲み込む勢いで迫ってきます。
結果はご存じのとおりです。
デザーモ騎手は1F標識とゴール板を勘違いして、
一瞬追うのをやめてしまいます。
すぐに立て直して猛追しますがレガシーはさらにグィと伸びて
1馬身あまりの差をつけてチャンピオンの座をもぎ取ります。
世に語り継がれる 《ゴール板誤認事件》 が
この勝負に大きな影響を与えたのは間違いないでしょう。
しかしレガシーもラスト1Fを12秒0の高速ラップを刻んでいます。
“気性難” と思えない素晴らしい集中力です。
並んでも抜かせなかったのでは、そう信じるに足る末脚でした。
きょうも来てくださってありがとうございます。
その後レガシーワールドは連戦連敗のままターフを去ります。
父モガミを通じて流れるリファールの血、
持ち前の集中力を切らしてしまったのでしょうか。
でも92年秋からの1年間に見せた “気の走り” は素晴らしいものでした。
短くも美しく燃え、そんな競走馬生活だったと思います。