酔いどれ対談
第23回
ホースマン藤澤和雄師を語る(1)
 

 

居丈高に競りかけてくるマクトゥーム一族に
「こんなところで油を売っていないで、
 国に帰って油を売ったほうがいいんじゃないか」
と啖呵を切ったという痛快なエピソードなど
今回からは山本オーナーと藤澤調教師の
世界を相手にした戦いの記録をおおくりします。

駿

“夢のパートナー”とおっしゃったが、
ホースマン山本英俊オーナーを語る場合、
どうしても欠かせないのが
ホースマン藤澤和雄調教師の存在だと思います。
このコンビはまさに一枚岩、固い絆に結ばれて、
めざす高みに向かっているわけですね。

それが必ずしも一枚岩というわけでもない(笑)。
私は繰り返しお話したように、
ヨーロッパのホースマンに学ぶところから
競馬に入っていますから、
凱旋門賞を最高のレースだと思っている。
それ以外は食わない偏食家みたいなものですね。

駿

藤澤さんは違うんですか?

私なんかより夢が大きいというか、
雑食系というか(笑)、
いろいろなレースに興味を持っていますね。
凱旋門はもちろんだけれども、
エプソムダービーやキングジョージ
(キングジョージVI世&クイーンエリザベスS)
にも挑戦したいし、
ケンタッキーダービーだって勝ちたい。
欲張りなんですよ(笑)。

駿

それはきっと、馬主である山本さんと
調教師である藤澤さん、それぞれの立場の
違いがそうさせるんだと思いますね。


 

なるほど、さすが清水さん、
鋭いところを見ていらっしゃる。
そのとおりでしょうね。

駿

それがわかっているから、
山本さんは凱旋門向きじゃない馬も
たくさん買っていますよね。
自分の夢を大切にするのはもちろんだが、
パートナーの藤澤さんの夢も
尊重するということですね。
まぁ、それでなくちゃ
パートナーシップなんてものは
成立しようがないですものね。

はい、私の力の及ぶ限りは
そうしていこうと思っています。

駿

このパートナーシップは
一枚岩ではないかもしれないが、
磐石の強さがうかがえます。

私はよくいうんですが、
一枚岩より二枚岩のほうが強いだろうって(笑)。
ベクトルさえ違っていなければ絶対にそうですよ。

駿

毛利元就の三本の矢じゃないが、
それはいいえて妙な表現ですな(笑)。
しかし下世話な話、
ホースマンへの道も半端じゃない単位の
お金がかかりますよね?

それは仕方ありません。

駿

一番高い買い物はいくらだったんですか?

私と藤澤先生のコンビは、一応、
世界中何カ所かでセリのレコードを持っています(笑)。
でも、セリはお金がかかるのは当然ですよ。
タタソールズとかへいってシェイク・モハメドとか
クールモアなんかを相手に競らなくては
いけなかったりするわけだから当然です。
あるセールで競り合いになっとき、
シェイクの関係者だか本人だかが
「日本のオーナーにもお金を持っている人がいるんだ」
といったらしいんですね。

駿

バカにしているね。

こちらは銭金でやっているわけじゃない。
競馬の価値はお金に換えられないと思っていますから、
さすがにカチンと来ましてね。
「こんなところで油売ってないで自分の国に帰って
 油を売った方がいいんじゃないか?」って(笑)。

駿

うまいね。うまい。
小気味のいい啖呵を切っちゃった。
でも、ドバイワールドCに挑戦するのに
そんなこといっちゃってよかったのかな?(笑)

まぁ、冗談ですけどね。

駿

シェイクに対してもそんな冗談を言えるオーナー
というのはそういないと思うけど、
ジョーク好きというのは藤澤さんもそうですね。
そういうところでも気が合う(笑)。
いわば底抜けコンビ、あちこちでいろんな
エピソードを残しているんでしょう(笑)。

そう、そう。都市伝説じゃないんだけど、
あちこちに藤澤伝説というのがあるようですね(笑)。

 

(あしたにつづく)

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