| カジノ不在のレースを観るのは嫌だといい、 次に発走直前、翻意し『やっぱり観る』 と言い出した藤澤調教師。 師がレース中にとった奇抜な行動とは…? |
俊 | スタートして最初のコーナーをカーブした時でした。 藤澤調教師がいきなり 『ケント(デザーモ騎手=当時ビッグブラウンに騎乗)、 やめろ!』って叫んだんです。 私は意味が分からなかったですよ。 結果的にビッグブラウンは最後方でノロノロと ゴールインした(主催者発表は競走中止)のですが、 『おかしい?!』といち早く見抜いたのが 藤澤先生だったんです。 |
駿 | さすがだね。みているところが違う。 |
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俊 | でもね、藤澤先生が『やめろ!』って叫んだのは それだけではなかった。向こう正面でも ずっと『ケント、やめてくれ!』って 叫びつづけている。それどころかしまいには 『とめろ~!』『やめてくれ~っ!』と いいながら泣き出したんです。 私は最初、理解できなかった。 『変な男を雇っちゃったか?』って思いました。 だって、ビッグブラウンの調教師は 我々のことをボロクソに言っていたんですよ。 『わざわざ日本から何をしにきたのか分からない』 とまでいっていた。ところが自分は 無理して出走させたがために、競走中止になった。 私は孔子じゃないから内心『そらみたことか?!』 って思ってしまいました。いや、これは本音ですよ。 でもね、藤澤先生は違った。 相手の調教師がどんな人間性だろうと、 馬には関係ないと思っていたのでしょう。 根っからの馬好きなんだと思い知らされました。 |
駿 | さすがだね。藤澤調教師はやっぱり 本当のホースマンなんでしょう。 |
俊 | ビッグブラウンの故障をみて、 藤澤先生はパニックになった。 そして、私はそんな変な親父をみて パニックになった(笑)。 |
駿 | ベルモントSの最中にそんな裏話があったんですね。 それにしても藤澤調教師にとっては 誰がオーナーだとか調教師だとか、 何のためにニューヨークまで行ったのか? とか、そういうことは関係なかったんだろうなぁ…。 一ホースマンとして純粋な気持ちでレースを観ていた。 だからそういう行動になったんでしょう。 やっぱり彼は正真正銘のホースマンなんですよ。 |
| (あしたにつづく) |