酔いどれ対談
第2回
海外挑戦には"世界仕様"の馬が先決
 

 

『三国志』に登場する
“三顧の礼”を地でいくような・・・
山本英俊オーナーと藤澤和雄調教師の出会いを
そう清水成駿さんは評した。
さて、“諸葛孔明”藤澤調教師は
“劉備玄徳”山本オーナーに
どんな“海外挑戦戦略”を伝えたのか?

駿

『三国志』では、
孔明が劉備に“天下三分の計”を語るのだが、
藤澤調教師は山本さんになにをいったんですか。

「海外挑戦は甘くないよ」と前置きした上で、
その難しさをひとつひとつ丁寧に説明してくれました。
分かっているようで全然分かっていなかったとか、
まったく知らなくて目からウロコといった感じの話とか、
もう、いまから考えると恥ずかしくなるような
無知さかげんでした。


 

駿

というと…?

まず、海外挑戦するには世界仕様の馬を
買わなければならないと教えられました。

駿

世界仕様の馬とは…?

そのまんまの意味です(笑)。
たとえば凱旋門賞に挑戦するのなら、
おのずと凱旋門賞にふさわしい血統とか馬体とか、
品格を初めから備えた馬を買うのが第一歩だと…。

駿

自動車のF1と同じですね。
いくら頑張ってもエンジンそのものが違ったり、
レースコースの形態や環境に合わせたデザインで
負けていては絶対に勝てない。
ライバルがみんな事故かなんかで
リタイアしてしまわないかぎり勝てませんよ(笑)。

でも、それって勝ったといえるのどうか、
ちょっとつらいですね(笑)。

駿

尾張の百姓の小せがれ・日吉丸が、
知恵と才覚で天下の太閤殿下豊臣秀吉に成り上がる、
そういう日本人が大好きなサクセスストーリーを
期待しちゃダメだということですね。
日本の競馬界には、安い馬を買ってきて、
あわよくばG1レースを勝たせたり、
賞金をいっぱい稼がせることが賢い馬主であり
偉い調教師であるという風潮があります。
競馬版太閤記ですね(笑)。
これではダメだと…。

はい。うちの社員によくいうんですが、
「成功に偶然あり失敗に偶然なし」って。
たまたま幸運に恵まれて成功することが
ないとはいえませんが、
失敗にはすべて理由がある。
失敗は偶然ではなくて必然ですからね。
偶然には理由がないから反省することができないが、
必然は筋道たててキチンと分析できます。
分析することで次の仮説が生まれてきます。
仮説が立てられれば、
もう一度チャレンジできますよ。
この繰り返しが大事なんだ、と。
だから失敗してもいいから
必然を突き詰めていこうよ、
といつも社員に話しているんですよ。
そういっている私が藤澤先生に
同じことをいわれちゃった(笑)。

駿

ハッハッハッ(笑)。
山本さん、偉いね。
大企業のオーナーで、
生活のかかった社員がいっぱいいて、
たくさんの取引先や株主もいて、
なかなかそうは思い切れない。

でも倉庫の片隅みたいなところから会社を興して、
ここまでこられたのは、
失敗しても失敗しても必然を追い求めて、
それを繰り返してきたからだと思っています。
馬鹿じゃないかと思われるほどね(笑)。
私はただ愚直なんですよ。
ビジネスも競馬も、そこは同じですね。

駿

話は戻りますが、
藤澤調教師はまず世界仕様の馬を
買うところからはじめろと山本さんにいったんですね。
それは分かった。
そのとおりだと思います。
そういうふうに根本的というか、
本質的なところから変えていかないと
日本の競馬レベルは、
とうてい世界に追いつけないという
藤澤調教師の思いはよく分かった。
でも、それはそう簡単なことじゃないですね。

 

世界に挑戦するなら
世界仕様の馬を手に入れろ
山本オーナーと藤澤調教師の馬探しの旅が始まる。
はたして世界に通用する名馬にめぐり会えるのか…?
さて…?
このつづきは明日おおくりします。

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