| 日本では庶民が食うや食わずの時代に イギリスでは産業革命が進み 余暇の王様・ダービーが誕生した。 |
駿 | まぁ、競馬はもともとが王侯貴族、 ジェントルマンの遊びではあったが、 仕事以外の自由な時間を自分のために使う という思想が根づいていた事実は、 認めなきゃいかんだろうと思いますね。 しかし、その対極には、 “ノブレス・オブ・リッジ”、 高貴なるものの義務が社会的に存在した事実もあった。 というのは、普段は領地や海外植民地から上がってくる 年貢みたいなもので安穏と暮らしているんだが、 一朝ことあれば自らが最前線で敵と切り結ぶ。 ジョンブル魂ここにあり、気概があります。 そうでないと領民から尊敬されない。 尊敬されなければ統治もうまくいかない、 だからある意味、彼らも必死なわけですよ。 |
俊 | 一説に英国軍将校の死亡率が以上に高いという伝説がありますね。 本当だとしたらそうした思想的背景があるからなんでしょうね。 遊びと社会的責務が表裏一体だった。 |
駿 | そういう面もたしかにあると思います。 しかし反面、遊びは自分の時間を 自由に使える人々にしか許されなかった。 有閑階級ですね。 誰が発明した言葉か知らないが、いい得て妙です(笑)。 ちょっと意地の悪さが透けて見えるのですが、 開き直っちゃえば、人類みな有閑階級、 それって理想じゃないですか(笑)。 |
|
俊 | まったくそうですね。開き直りましょう(笑)。 有閑階級は英語では“レジャー・クラス”というらしいですね。 これって最高のネーミングですよ。 |
駿 | そりゃいい。またまた、いい得て妙ですな(笑)。 そのレジャー・クラスというのを 創りだしていくのが政治の仕事だろうし、 企業の使命みたいなことですよ。 かつてのイギリスのように植民地経営に頼るのではなく、 自ら富を生み出して、それで国が豊かになって、庶民が潤い、 余暇を存分に楽しめるようになれば理想だろうと思いますね。 |
俊 | 余暇の時間を創りだすというか、 その点で松下幸之助さんなんか偉いと思いますね。 |
駿 | ナショナルですか? |
俊 | ええ。 日本も西欧に追いつけ追い越せと国は豊かになっていきますね。 ところが庶民は仕事に追いまくられて余暇どころじゃない。 とくに女性ですね。 昔は掃除とか洗濯とか大変な重労働じゃないですか。 ひとりふたりでも大変なのに、大家族が普通の時代でしたからね。 朝から夜中まで働きどおしです。 私の母なんかも自営業ですから そちらの仕事もしながら家事をこなしていた。 子供心にも大変だなと思っていました。 |
駿 | そこへスイッチひとつで飯が炊ける、掃除が片づく、 洗濯も手をわずらわせないで済んでしまう。 そういう家電製品が登場してきて、 日本の女性に福音をもたらしたわけですね。 |
俊 | そうです。 寝る暇も惜しんで働いていた女性が、 ある日、突然に自由な時間を手に入れることになった。 余暇の時代を語る上で、すごく重要なターニングポイントですね。 |
| (あしたにつづく) |