酔いどれ対談
第7回
"予想の真髄"を語る(前編)
 

 

予想家のプライドは馬券の当たり外れにはない、
と、キッパリいい切る成駿さん、
今回は“予想の真髄”談義をおおくりします。

もう少しお聞きしてもいいですか。
清水さんは、カリスマ予想家といわれている。
それはよく当るからですよね。
とくに穴馬券がです(笑)。
それなのに自分のプライドは
当たり外れにはないとおっしゃる。

駿

さっきもいいましたが、
競馬は予測じゃなくて研究ですよ。
でなければ、みんな“明日の新聞”
みたいなことになっちゃう(笑)。

ずいぶんと昔の映画なんですが、
ルネ・クレール監督に『明日を知った男』
というのがあります。
若い新聞記者がトクダネをものにしようと
張り切っているんだが、
現実は決まりきった現場回りの毎日で、
ちょっとうんざりしはじめている。
そんなある晩、
定年退職した老記者から1枚の新聞をもらう。
それは“明日の新聞”だったという話です。
現実にはまだ起きていないことが、
そこには過去として書かれているわけです。
新聞に載っているレース結果と同じ馬券を買うと、
実際のレースもそのとおりになって大儲けする。
もうトクダネも取り放題になっちゃいます(笑)。


 

駿

そうそう(笑)。
まぁ、でも話にはオチがあって、
ある日の新聞の片隅に、
競馬で大儲けした新聞記者が
事故で死んだという記事が出ていた(笑)。

この手の話は、
ちょっとずつ形を変えて
世界中にあるみたいですね。
なぜか共通しているのは、
競馬で大儲けすること(笑)、
その新聞に自分の死亡記事が載っていて、
そのとおりになってしまうこと(笑)、
ブラックユーモアですね。

駿

そういう話があちこちにあるというのは、
世界中みんながそれほど馬券を当てたいと
強く思っているんでしょうね。
同じ競馬好きとして
その気持ちはよく分かりますよ。
でも残念ながら、
私には“明日の新聞”がつくれない(笑)。

よくよく考えると“明日の新聞”で
馬券を買っている男がいたとして、
みんなすぐに真似ますよ。
そもそも競馬自体が成立しなくなっちゃう(笑)。

駿

百歩も千歩も譲って仮に成立するとして、
でもね山本さん、私にいわせりゃ、
当たると決まっている競馬が面白いわけがない。
ワクワクもしなけりゃ、ドキドキもしない。
誰も競馬をやろうなんて思わなくなっちゃう。
そうなると私は廃業ですよ(笑)。

私も馬主をやめます(笑)。
多くの人をワクワクドキドキさせてこそ
競馬ですからね。
清水さんの予想が人気のあるのも、
行間からドキドキワクワクが
伝わってくるからですよね。

駿

そうだとうれしいんですが…。

たとえば18頭立てのレースがあるとします。
そこにはいろんなワクワクドキドキが
あると思いますが、
そのエッセンスというか真髄をギュッと抽出して
最高のワクワクドキドキに
表現するコツってあるんでしょうか?

駿

私なりの予想のスタンスという意味なら、
それはあります。

 

(あしたにつづく)

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