酔いどれ対談
第19回
ロンシャンに架ける夢(前編)
 

 

『酔いどれ対談』もことしの2歳馬談義に入り
いよいよ熱を帯びてきました。
今回からは山本オーナーが
1頭の繁殖牝馬にかけた壮大な夢のお話です。

駿

ディニーパーという種牡馬は
聞きなれない名前なんですが、
なにかオーナーの意図があったんですか。

いえ、これには意図もなにもありません。
私がほしかったのは母親のマンダララだったんです。

駿

なるほど、
山本さんが買ったとき母親は受胎中だったんだ。

ご明察です。


 

駿

それじゃ、長年追いかけてきた恋人が、
やっと山本さんの元に来たと思ったら、
どこの馬の骨とも知れない男の子供が
お腹に入っていた、みたいな話ですね(笑)。

ディニーパーにも生まれてきた仔馬にも、
何の罪もありませんが、
下世話にいってしまえばおっしゃるとおりですね(笑)。

駿

マンダララですか。なぜこの馬に
山本さんはそこまで入れ込むんですか。

話せば長くなりますが、私は仕事の合間を縫って、
こまめに海外へ出かけるんですが、
とくに凱旋門賞は毎年欠かしません。
その凱旋門賞の日にマンダララという存在を
はじめて知ることになりました。

駿

ホーッ、ロンシャンでなにが起きたんですか。

ディープインパクトが出走した凱旋門賞の日でしたから、
3年前の2006年の10月ですね。
ご存じのようにその日はロンシャンウイークエンドといって、
G1がいくつも組まれていますね。

駿

直線だけのアベイユ・ド・ロンシャン賞、
2歳牝馬チャンピオン決定戦のマルセル・ブサック賞、
2歳牡馬チャンピオンを争うジャン・リュック・ラガルデール賞、
それに最強牝馬を決めるオペラ賞がありますね。
日本でいうとジャパンC、ジュベナイルフィリーズ、
朝日杯フューチュリティーSからエリザベス女王杯まで
1か月分のG1を1日でやってしまう。豪華絢爛だが、
日本だと馬券が売れなくなっちゃうから無理だろうなぁ(笑)。

さすがによくご存知ですね。
それで、そのオペラ賞という
凱旋門賞の直前に行われるレースなんですが、
マンデシャという3歳牝馬が出ていて、
並みいる強豪古馬をなぎ倒して圧勝してしまったんです。

駿

マンデシャは、その年のカルティエ賞に選ばれているから、
ヨーロッパ最強牝馬ということになりますね。

えぇ。ただその勝ち方が非常に尋常じゃなかったんで
調べてみたんです。父はデザートスタイルという
ダンチヒ系の快速血統です。
母はもちろんマンダララなのですが、馬主の欄には
プリンセス・ザーラ・アガ・カーンと書かれていました。

駿

ホーッ、なんとオーナーは、
ヨーロッパ最高のオーナーブリーダーとして賞賛と尊敬を
集めるアガ・カーン殿下のお姫さまだったんだ!

 

(あしたにつづく)

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