| 『酔いどれ対談』もことしの2歳馬談義に入り いよいよ熱を帯びてきました。 今回からは山本オーナーが 1頭の繁殖牝馬にかけた壮大な夢のお話です。 |
駿 | ディニーパーという種牡馬は 聞きなれない名前なんですが、 なにかオーナーの意図があったんですか。 |
俊 | いえ、これには意図もなにもありません。 私がほしかったのは母親のマンダララだったんです。 |
駿 | なるほど、 山本さんが買ったとき母親は受胎中だったんだ。 |
俊 | ご明察です。 |
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駿 | それじゃ、長年追いかけてきた恋人が、 やっと山本さんの元に来たと思ったら、 どこの馬の骨とも知れない男の子供が お腹に入っていた、みたいな話ですね(笑)。 |
俊 | ディニーパーにも生まれてきた仔馬にも、 何の罪もありませんが、 下世話にいってしまえばおっしゃるとおりですね(笑)。 |
駿 | マンダララですか。なぜこの馬に 山本さんはそこまで入れ込むんですか。 |
俊 | 話せば長くなりますが、私は仕事の合間を縫って、 こまめに海外へ出かけるんですが、 とくに凱旋門賞は毎年欠かしません。 その凱旋門賞の日にマンダララという存在を はじめて知ることになりました。 |
駿 | ホーッ、ロンシャンでなにが起きたんですか。 |
俊 | ディープインパクトが出走した凱旋門賞の日でしたから、 3年前の2006年の10月ですね。 ご存じのようにその日はロンシャンウイークエンドといって、 G1がいくつも組まれていますね。 |
駿 | 直線だけのアベイユ・ド・ロンシャン賞、 2歳牝馬チャンピオン決定戦のマルセル・ブサック賞、 2歳牡馬チャンピオンを争うジャン・リュック・ラガルデール賞、 それに最強牝馬を決めるオペラ賞がありますね。 日本でいうとジャパンC、ジュベナイルフィリーズ、 朝日杯フューチュリティーSからエリザベス女王杯まで 1か月分のG1を1日でやってしまう。豪華絢爛だが、 日本だと馬券が売れなくなっちゃうから無理だろうなぁ(笑)。 |
俊 | さすがによくご存知ですね。 それで、そのオペラ賞という 凱旋門賞の直前に行われるレースなんですが、 マンデシャという3歳牝馬が出ていて、 並みいる強豪古馬をなぎ倒して圧勝してしまったんです。 |
駿 | マンデシャは、その年のカルティエ賞に選ばれているから、 ヨーロッパ最強牝馬ということになりますね。 |
俊 | えぇ。ただその勝ち方が非常に尋常じゃなかったんで 調べてみたんです。父はデザートスタイルという ダンチヒ系の快速血統です。 母はもちろんマンダララなのですが、馬主の欄には プリンセス・ザーラ・アガ・カーンと書かれていました。 |
駿 | ホーッ、なんとオーナーは、 ヨーロッパ最高のオーナーブリーダーとして賞賛と尊敬を 集めるアガ・カーン殿下のお姫さまだったんだ! |
| (あしたにつづく) |