| 『三国志』に登場する “三顧の礼”を地でいくような・・・ 山本英俊オーナーと藤澤和雄調教師の出会いを そう清水成駿さんは評した。 さて、“諸葛孔明”藤澤調教師は “劉備玄徳”山本オーナーに どんな“海外挑戦戦略”を伝えたのか? |
駿 | 『三国志』では、 孔明が劉備に“天下三分の計”を語るのだが、 藤澤調教師は山本さんになにをいったんですか。 |
俊 | 「海外挑戦は甘くないよ」と前置きした上で、 その難しさをひとつひとつ丁寧に説明してくれました。 分かっているようで全然分かっていなかったとか、 まったく知らなくて目からウロコといった感じの話とか、 もう、いまから考えると恥ずかしくなるような 無知さかげんでした。 |
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駿 | というと…? |
俊 | まず、海外挑戦するには世界仕様の馬を 買わなければならないと教えられました。 |
駿 | 世界仕様の馬とは…? |
俊 | そのまんまの意味です(笑)。 たとえば凱旋門賞に挑戦するのなら、 おのずと凱旋門賞にふさわしい血統とか馬体とか、 品格を初めから備えた馬を買うのが第一歩だと…。 |
駿 | 自動車のF1と同じですね。 いくら頑張ってもエンジンそのものが違ったり、 レースコースの形態や環境に合わせたデザインで 負けていては絶対に勝てない。 ライバルがみんな事故かなんかで リタイアしてしまわないかぎり勝てませんよ(笑)。 |
俊 | でも、それって勝ったといえるのどうか、 ちょっとつらいですね(笑)。 |
駿 | 尾張の百姓の小せがれ・日吉丸が、 知恵と才覚で天下の太閤殿下豊臣秀吉に成り上がる、 そういう日本人が大好きなサクセスストーリーを 期待しちゃダメだということですね。 日本の競馬界には、安い馬を買ってきて、 あわよくばG1レースを勝たせたり、 賞金をいっぱい稼がせることが賢い馬主であり 偉い調教師であるという風潮があります。 競馬版太閤記ですね(笑)。 これではダメだと…。 |
俊 | はい。うちの社員によくいうんですが、 「成功に偶然あり失敗に偶然なし」って。 たまたま幸運に恵まれて成功することが ないとはいえませんが、 失敗にはすべて理由がある。 失敗は偶然ではなくて必然ですからね。 偶然には理由がないから反省することができないが、 必然は筋道たててキチンと分析できます。 分析することで次の仮説が生まれてきます。 仮説が立てられれば、 もう一度チャレンジできますよ。 この繰り返しが大事なんだ、と。 だから失敗してもいいから 必然を突き詰めていこうよ、 といつも社員に話しているんですよ。 そういっている私が藤澤先生に 同じことをいわれちゃった(笑)。 |
駿 | ハッハッハッ(笑)。 山本さん、偉いね。 大企業のオーナーで、 生活のかかった社員がいっぱいいて、 たくさんの取引先や株主もいて、 なかなかそうは思い切れない。 |
俊 | でも倉庫の片隅みたいなところから会社を興して、 ここまでこられたのは、 失敗しても失敗しても必然を追い求めて、 それを繰り返してきたからだと思っています。 馬鹿じゃないかと思われるほどね(笑)。 私はただ愚直なんですよ。 ビジネスも競馬も、そこは同じですね。 |
駿 | 話は戻りますが、 藤澤調教師はまず世界仕様の馬を 買うところからはじめろと山本さんにいったんですね。 それは分かった。 そのとおりだと思います。 そういうふうに根本的というか、 本質的なところから変えていかないと 日本の競馬レベルは、 とうてい世界に追いつけないという 藤澤調教師の思いはよく分かった。 でも、それはそう簡単なことじゃないですね。 |
| 世界に挑戦するなら 世界仕様の馬を手に入れろ 山本オーナーと藤澤調教師の馬探しの旅が始まる。 はたして世界に通用する名馬にめぐり会えるのか…? さて…? このつづきは明日おおくりします。 |