| 世界仕様の馬を求めて 山本オーナーと藤澤調教師の二人三脚がはじまった。 「失敗に次ぐ失敗」と山本さんはいうが、 その真相に成駿さんが斬りこみます。 |
駿 | さて、そろそろ山本さんの数々の失敗談 というのを聞かせてもらいましょうか(笑)。 2004年に馬主になって、 たしか2003年生まれの仔馬たちが最初でしたね。 |
俊 | 本格的にはそうですね。 ただ、せっかく競走馬オーナーになったのに、 1年も2年もデビューを待つのは寂しいから(笑)、 ひとつ年上のストームキャットの仔を走らせました。 ミスターケビンという馬です。 |
駿 | あぁ、そうでしたか。 |
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俊 | この馬に関しては、 馬自身やスタッフのみなさんには 申し訳ないいい方になりますが、 正直いって下の世代が出てくるまでの ツナギくらいの感覚で それほど大きな期待もしていなかったんです。 ところが、この仔が新馬と500万条件のマイル戦を 連勝してくれたんですね。 おっ、これなら案外と早く夢がかなうかもしれない と思っちゃった(笑)。 |
駿 | マイル2連勝ですか、たいしたものです。 そこで意気揚々とマイル重賞のG2 ニュージーランドトロフィーに駒を進めたんですね。 |
俊 | ええ、そうでした。 勝ったらどうしよう、 先々はジャックルマロワ賞や ムーランドロンシャン賞(ともにマイルの仏G1戦) なんてのも悪くないな、 なんてひそかに考えたりして…(笑)。 |
駿 | ところが1番人気に支持されたのに結果はブービー。 惨敗でした。 |
俊 | まったく競馬にならなかったですね。 競馬は甘いものじゃなかったです。 一瞬でもヨーロッパG1を夢想した自分が 恥ずかしかったですね。 それより私にとって大ショックだったのは、 ファンが怒っているんです。 1番人気で見せ場もなく敗れたことに対して 猛烈に怒っているんですよ。 |
駿 | それは怒りますよ(笑)。 |
俊 | そのときしみじみ思いました。 あぁ、馬って馬主ひとりのものじゃないんだなって。 生産者がいて、育成してくれる人がいて、 調教師や調教助手や厩務員さんがいて、 さらに馬券をつうじて応援してくれる たくさんの人たちがいて、 みんながそれぞれに抱いている思いが ヅッーとつながっているんだ、 そういう思いを大事にして初めて競馬なんだ、 と思い知らされました。 そういう意味でミスターケビンという仔には 本当に教えられました。感謝しています。 |
駿 | 私も40年近く予想稼業をやっていて、 外れれば怒られ、当たればほめられ、 まぁ、怒られることが多いんですけれどね(笑)。 しかし競馬って、馬がいて、それを走らせて、 馬券買う人がいて、勝った負けたと一喜一憂する、 それで終わりじゃないですね。 山本さんがおっしゃるように、 人と人が無言のうちにつながりあっている、 そういう競技なんですね。 それがなければ私の稼業も成り立たないですよ。 で、話を進めますが、 いよいよ本格的に馬主に取り組むことになった。 |
俊 | はい、2003年生まれの仔は4頭で、 サドラーズウェルズが3頭と レインボークエストでした。 すべて海外のセリや牧場で購入しました。 |
駿 | それはまた思い切った選択でしたね。 普通に考えると最初の買い物で それはないでしょうという感じ(笑)。 |
俊 | みなさんにそういわれます(笑)。 |
駿 | たしかにサドラーは大種牡馬で ヨーロッパでG1レースを勝ちまくりました。 とくに英ダービー、キングジョージ (キングジョージ6世&クイーンエリザベスS)、 凱旋門賞といったチャンピオンディスタンス (2400m)で抜群の底力を発揮しています。 もう、こんな怪物種牡馬は出ないでしょう。 しかし日本の競馬にはまったく適性がなく、 サージュウェルズが3600mの G3ステーヤーズSを勝ったくらいです。 しかも8番人気とまったく評価されていなかった。 馬が走るのは環境への適応力も 大きく影響すると思うんですが、 それにしてもこれだけの落差というのは珍しい(笑)。 |
俊 | はい、おっしゃるとおりですね(笑)。 |
駿 | もう1頭のレインボークエストも 凱旋門賞を勝った名馬で、 ヨーロッパでは種牡馬としても大成功しています。 ところが日本ではサクラローレルが 天皇賞・春と有馬記念に勝っているが、 この国のスピード競馬に 明らかに適性を欠いていたとしか思えません。 |
俊 | そのとおりだと思います。 |
駿 | すべて分かっていて、あえて買った…。 山本さんと藤澤調教師が、 いくら世界仕様の馬を求めていると 頭では理解していても、 これは冒険も冒険、大冒険ですね。 なぜ、そこまでこだわったんですか? |
| 山本オーナーが本格的に購入をはじめて 最初の買い物はまったく日本適性がない といわれているサドラーズウェルズと レインボークエスト。 なぜ、山本オーナーはそこにこだわったのか? |