酔いどれ対談
第6回
日本で走らせる理由
 

 

日本でもヨーロッパでも走る
理想の血統とは…?
そのためにはなにが求められるのか?
成駿さんが、その謎を解き明かします。

駿

まず、日本で走らないと話がはじまらない
ということですが、それはどうしてですか?

これも藤澤先生から教わったことなんですが、
デビュー戦に日本で下ろさないと、
それ以降は招待レースでもないかぎり
日本で走ることができなくなるんです。

駿

JRAも少しずつ国際化していますが、
まだいろいろと閉鎖的な
レギュレーション(規制)が残っていますからね。

ちょっと寂しいですね(笑)。
それに日本のファンの方々にも申し訳ない。
私も藤澤先生もJRAの一員ですから、
日本の競馬を盛り上げる義務がある
と思っています。
その観点からも私の馬に日本で素晴らしい
パフォーマンスを見せてもらわないと、
意義ある貢献ができないことになります。


 

駿

カジノドライヴを、アメリカから
帰国間もないジャパンCダートに使ったり、
ドバイにいく前にあえてフェブラリーSを
走らせたようにですね。この参戦で
両方のレースが大いに盛り上がりました。
山本オーナーは大きな貢献をしたと思いますよ。

ありがとうございます。
そういっていただけると非常にうれしいです。
それと、なぜ日本で走らせるか
ということについては、
もうひとつ理由があります。

駿

それは…?

ヨーロッパであれ、アメリカであれ、
それぞれの国のさまざまなレースには、
ひとつひとつに歴史があり伝統があります。
その国の方々、とくにホースマンは、
そうした歴史や伝統をとても大事にして、
レース自体を尊敬し、誇りを持っています。

駿

そうですね。
私はアメリカ競馬を観戦によく出かけるんですが、
たとえばケンタッキーダービー、
あの勝利オーナーに対する賞賛というか
尊敬はすごいですね。スタンド前では、
みんながスタンディングオーベーションで出迎える。
もう全米のスーパーヒーロー、名士ですよ。
イギリスのチャーチル首相が
“一国の宰相よりもダービーオーナーになりたい”
といった言葉が実感としてよく分かります。

ええ。ですから、
そうしたレースにふさわしい、
恥ずかしくない実績を日本で積んで、
あちらに乗り込まないと失礼になります。

駿

なるほど。
しかし、それは大変なことですよ。
藤澤調教師が山本さんに
“海外挑戦って口でいうほど簡単じゃないよ”
と釘を刺した話を先ほど聞きましたが
第1回をご覧ください)、
こうしたとんでもなく難しい問題が、
それこそゴロゴロ転がっているよ、
ということだったんですね。

そうですね。
藤澤先生のおっしゃるとおり、
私の想像をはるかに超える難しさですね。
ちょっと甘く考えていた自分が恥ずかしくなります。

駿

そうして、キチンと反省するのが
山本さんの大きなところですね。
感服させられます。

ビジネスの世界ですと、
ある程度は先を予測して
戦略を考えたりできるんですが、
競馬は本当に難しい(笑)。
その難しい競馬で予想をやってらっしゃる
清水さんは本当にすごいですね。

駿

ハッハッハッ。
いや予想家というのは、
山本さんと同じで反省と研究がすべてなんですよ。
予想が当たることが
予想屋のプライドじゃないんです。

えっ、そうなんですか?

駿

そうなんです(笑)。
レースが終わりますね、
当たることもあれば外れることもあります。
でも、大事なのはレースが終わった瞬間に、
なぜそうなったかをキチンといえることなんです。
そうでないと次がない。
だからプロの予想屋としての私のプライドは
そこにあるんだ、といつもいっています。

たしかに競馬のレースって、
展開とかペースとか何十とおりも、
何百とおりも考えられますよね。
馬の気分もあるし、
騎手の心理も重要なファクターになってきます。
そうした細かいファクターを加えていくと、
たぶん天文学的な数になる
複雑なケースが想定できますね。

駿

ハッハッハッ。
いや予想家というのは、
山本さんと同じで反省と研究がすべてなんですよ。
予想が当たることが
予想屋のプライドじゃないんです。

 

予想家と競馬オーナーには共通点があった。
なにごとにも反省と研究が大事。
さて、成駿さんと英俊さん、
おふたりの研究と反省はどこに向かうのか?

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