それいけオークス

第12回 ジョッキー今昔物語

今ではあり得ない上下関係が厳然と存在していた遠い昔の競馬。
兄弟子が一喝すれば進路が開き、馬上でムチの貸し借りまであった!?

―― 松永調教師は、現役騎手の頃は、レース中に声を出す方でしたか?

松永

危ないときはもちろん声を出してましたけどね。

四位幹夫さんは、ジェントルマンですからね(笑)。
ぼくなんか、どちらかというと、
怒ったらすぐにテンションが上がったり、
逆に落ち込んだら、
すぐにシュンとなっちゃうほうなんですけど、
幹夫さんは精神的に安定しているというか、
いつも同じ感じでしたね。
松永そういうわけでもないと思うけど(笑)。
でも、最近の競馬はスマートになったと思いますよ。
「どけー!」なんて大声を出すジョッキーって、
イマドキいないんじゃない?

 

 

四位ええ、そうですね。
昔はひどかったですけどね(笑)。
松永ひと昔前は、所属厩舎に必ず兄弟弟子がいる、
というのが普通でしたからね。
そういう時代は、もっと強烈だったみたいですよ。
兄弟子から声をかけられたら、
進路を開けてやるとか、
ムチ落としたときに、弟弟子に
「ムチを貸せ!」
って言う人までいたとか、
話には聞いたことあります(笑)。
四位まあ笑い話みたいなものだと思いますけどね(笑)。
でも、いくら先輩の命令とはいえ、
貸す方も貸す方ですよね(笑)。

 

 

松永ほんとに(笑)。
でも、昔と今では、いろいろ変わってきてますよ。
昔は、騎乗数も成績も、
ある程度、平均化してましたけど、
今は、ものすごく勝つ人もいれば
全然勝てない人もいる。
差が激しくなってきてますよね。
厳しい時代ですよ。

―― そんな厳しい状況の中で、四位騎手はもう少しで1200勝。
            現役時代1400勝した「騎手・松永幹夫」に、近づきつつあります。

松永ぼくの数字なんて全然ですよ。
四位そんなことないですよ。
ぼくも1400勝まで、あと200勝ぐらいですけど、
ここからが大変です。
若手もいっぱい出てきてますし、
あと、年とともに、
騎乗馬が減ってきているも事実なんですよ。
「こういう馬だし、四位には頼めないな」
っていう感じで、幹夫さんもそうだし、
厩舎のみなさんが
ぼくに気を使ってくださっている部分も
あるんでしょうけどね。
松永こないだ、四位には
気性がちょっとおかしい馬に
乗ってもらいましたけどね。
四位あれ、レース終わってすぐ言いましたもん、
「これ、もう上げちゃったほうが
いいんじゃないですか?」
って(笑)。
松永言ってたな(笑)。
 

(明日につづく) 14時に更新します