穴馬の多くは、何らかの不当評価や思い違いによって存在するもので、
一度や二度走ったのを見ただけで本当の実力を見抜くことはできない。
そして、その不当評価や思い違いを発見するのは非常にむずかしく、
少々のキャリアではもちろんのこと、専門家クラスでも並大抵ではない。
単なる人気薄の馬と穴馬とでは、まったく違うものだと認識してほしい。
たとえば90年度でいえば、人気馬の代表として、
ご存知、オグリキャップやスーパークリーク、イナリワンなどがいたが、
この馬たちを穴馬とは誰もいわない。
ところが、である。
89年の「天皇賞・秋」では、そのオグリ - スーパークリークの3-8は4.1倍、
オグリ - イナリワンの3-4は4.5倍という絶対的人気だった。
それが、レースが変わると、とたんに人気ではなくなってしまうことがあるのだ。
同年の「ジャパンカップ」だ。
海外の海セン山センの馬が加わっただけで、
オグリ - スーパークリークの2-4は12.2倍にもなり、
オグリ - イナリ、スーパークリーク - イナリともなると、
2-4のさらに何倍にもなっていたのだ。
オグリキャップやスーパークリークの実力は誰もが知るところではあるが、
こんな日本の最強馬でさえ、ときとして穴評価になってしまうのだ。
この例でわかるように、競馬というギャンブルは、
それぞれのレース全体のバランスで人気が決まっていく。
Aという人気薄の馬が、
あるレースで正当な評価を下されて人気が上がったとしても、
次のレースでAより強いと思われる馬が何頭も出走すれば、
また穴評価になって人気薄になる。
対戦相手によって、クルクルと馬の評価が変わるのが競馬なのである。
日本の競馬においては、ほんの数頭のスターホースを除いて、
組み合わせしだいではみんな穴馬になるということだ。
株のように、先物買いしなければ穴馬券はとれないと思うのは錯覚だ。
得体の知れない人気薄の馬を穴馬として買いつづけるより、
正体の見えている穴馬を買うことこそ肝心である。
穴馬は、レース全体のバランスで存在するものという認識を大切にし、
長い眼で見れば、常識にかなった穴馬が発見できるようになり、
常識を逸した穴馬券買いがいかに損かがわかるようになるはずである。
・・・次回は「“一杯追”の休養明け馬は買い」をお送りします。
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東邦出版発行『知って得する競馬の金言』より
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