使い込んでいる馬なら、この程度の追い切りでも力は発揮できるのだ。
15~15が軽目なのは事実だが、実際にみる15~15はかなり速い。
200mを15秒で走るのだから、時速に換算すれば48キロメートルになる。
実際のレースは、時速60キロぐらいになるので軽く感じるだけで、
この程度のタイムがだせれば
七分程度の出走態勢がととのったとみていいのである。
この際、日付けも忘れずにチェックすること。
これは、最初のタイム計示のみならず、
出走直前の最終追い切りまで“読む”ポイントになる。
調教は、約2ヵ月前ぐらいからが理想である。
追い切りを始めてから出走日までの間隔が
短ければ短いほどどこかにムリがあり、急仕上げということになる。
ただし、いきなり13~13ぐらいをだす馬がいる。
こういった馬は、牧場で十分乗り込んできた馬である。
シンボリルドルフがいたシンボリ牧場の馬などがその典型だが、
牧場からトレーニングセンターへ再入厩して1本も追えばOKという馬も多い。
こうしたやり方は、これからふえてくる調教パターンだが、
このケースは急仕上げではない。
こういうタイプの馬がいるから、
調教は何本やればいいのかという質問はナンセンスなのである。
調教は、徐々にピッチをあげてタイムも速くなっていくが、
遅いタイムなら週2本、速いタイムで追った場合は、
翌週が軽目でもそのときタイムがでているかどうかがチェックポイントになる。
タイムがでていれば、好調とまではいえなくても、
内臓がしっかりしているといえるのである。
どこかに欠陥があると、連続して追い切れないし、馬場入りを休んだりする。
また、いったん途切れてしまった馬は最初からやり直しだから、
乗りだした日が早くてもなんにもならない。
こんなワケで、調教を読む際、
日付けは重要なファクターになるのである。
次に重要なのは、“脚いろ”短評だ。
馬なり、強めに、一杯追、追一杯といったものが基本的パターンだが、
この中で“一杯”が何本あるかがポイントになる。
多ければいいというものではないが、0~1本ぐらいはいただけない。
ことに最終追い切りだけ一杯に追って好タイムというのは
いちばんよくないケースである。
調教の基本は、馬体を絞ったり能力を計ったりすることではなく、
目に見えない内臓をきたえることなのだ。
だから、一杯に追えるというのは、その馬が健康な証拠。
そして、2本、3本と一杯に追えれば、
激しい運動量が要求されるレースにも耐えられるワケである。
もうひとつの効果は、馬の精神面だ。
競走馬は、強い追い切りがあると、レースが近いことを知る。
新馬は別だが、レース経験豊な休養馬は、
このことでレースの勘をとりもどすのである。
ともあれ、タイムの速い、遅いはまったく関係ない。
しまいがバタバタになっても、
とにかく一杯に追えることが鉄砲駆けの条件なのである。
追い切りの際の併せ馬。これまた重要だ。
これも精神面にプラスに作用するが、
レース未経験の馬や休養明けのハンデがある馬は、普通、内に併せるもの。
これが最終追い切りで外になっていれば、仕上がり具合は上々といえる。
ただし、弱い馬を内に入れるのが慣例で、
格上馬と併せた場合はこの限りではない。
休養馬は、その休養理由も重要になる。
ササ針、放牧は馬がボケるケースが多く、
二度たたいてからが普通である。
故障馬は、前述のとおり、一杯追が多ければ心配はいらない。
新馬は、牡馬と牝馬とでは差があるが、
やはり一杯追、併せ馬、そして内、外の関係も前述したとおりである。
牡馬は、カンのにぶいタイプが多いだけに、
最終追い切りも一杯追が好ましい。
牝馬の場合は、1週間前ぐらいに速めに追って、
直前に軽目が理想だ。
また、新馬の場合、本馬場(芝コース)での調教の有無もポイントになる。
ダート戦に出走する場合は必要ないが、
芝コースは一度経験していないと馬がとまどったりするものだ。
ところで、新馬でも、調教1、2本で出走してくる馬がいる。
多くの場合、急仕上げとされてきたが、これが案外と走る。
現6歳(91年現在)のブァンフォーアコーなど、
15~15より遅いタイムしかださずに新馬戦を勝ってしまった。
成宮厩舎に多いパターンだが、
新馬の調教タイムが少ない馬は仕上がり万全とみていいのかもしれない。
・・・次回は「調教時計はラップで読め」をお送りします。
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