そこで、タイムより重要なのは、
併せ馬か単走かということになるが、
一般的には単走で追う。
1頭で走らせて、きちっと最後まで走りきるかどうかを見るわけで、
調子のバロメーターとしてこれほど簡明なものはないといえる。
「単走で馬なり好タイム」という言い方があるが、
これは評価とすれば最高の部類に入る。
どういうことかというと、単走で十分なほど体ができていて、
しかも単走で追える素直な気性の馬であり、
鞍上が追わなくても自らスピード感十分に走り、無理なくフィニッシュ。
さらにタイムもよいというわけで、申し分ないということなのである。
ただし、だからといって勝てるというわけではない。
単走というのは、いま述べたように、その馬の完成度を示すものである。
だが、馬は群れて走る習性があり、
それがレースで激しい闘志をもやす要因ともなっているわけで、
単走で好走したからといって、必ずしも勝てるというものでもないのだ。
それでもなお、レース前に余分なエキサイトは避けたいもの。
暴走してはスタミナがなくなってしまう。
そういう意味でも単走には大きなメリットがあるのだ。
逆に併せ馬というのは、2歳馬がそうであるように、
常に模擬レースが必要なタイプの馬にほどこす調教である。
これには3つのケースがある。
1. 2歳馬のようにレースなれしていない馬。
2. レース同様にエキサイトして走らせなければ、馬体が絞りきれない馬。
3. 気性に問題があり(気が荒い、気が小さいなど)、その矯正トレーニングが必要な馬。
また、併せ馬とひと口にいっても、内と外、
あるいは中と、それぞれ意味が違い、
どこに併せるかも重要なサインとなる。
併せ馬は、2~5頭でするが、
「外に併せる」のは、その馬が強いことの証明である。
多少のコース損をしても、遅れないレベルの馬が外に行くからだ。
「内」の馬は、その外の馬にケイコをつけてもらっているのである。
だから、“内で先着”は、同じ先着でも評価が下がってしまう。
「中」は「内」に似ているが、気が小さいためにほどこされる調教だ。
馬群の中へ突っこめない(騎手にもこういうタイプがいるが)、
他馬が脇へくるとひるむ、耳を絞る、フットワークがバラバラになる、
といった馬は、中、または内へ入る。
そういったワケで、中(内も同じ)で併せる馬は
弱点をかかえているともいえるのだ。
ポイントは、こうした内、中にいた馬がやがて外、
単走となったときだ。それだけその馬が成長した証だからだ。
注意深くチェックしてみることも必要だろう。
・・・次回は金曜日の更新となります。お楽しみに!
東邦出版発行『知って得する競馬の金言』より
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