知恵の言葉

中、内は、ハナタレ小僧(後編)

そこで、タイムより重要なのは、
併せ馬単走ということになるが、
一般的には単走で追う。
1頭で走らせて、きちっと最後まで走りきるかどうかを見るわけで、
調子のバロメーターとしてこれほど簡明なものはないといえる。
「単走で馬なり好タイム」という言い方があるが、
これは評価とすれば最高の部類に入る。
どういうことかというと、単走で十分なほど体ができていて、
しかも単走で追える素直な気性の馬であり、
鞍上が追わなくても自らスピード感十分に走り、無理なくフィニッシュ。
さらにタイムもよいというわけで、申し分ないということなのである。
ただし、だからといって勝てるというわけではない
単走というのは、いま述べたように、その馬の完成度を示すものである。
だが、馬は群れて走る習性があり、
それがレースで激しい闘志をもやす要因ともなっているわけで、
単走で好走したからといって、必ずしも勝てるというものでもないのだ。
それでもなお、レース前に余分なエキサイトは避けたいもの。
暴走してはスタミナがなくなってしまう
そういう意味でも単走には大きなメリットがあるのだ。
逆に併せ馬というのは、2歳馬がそうであるように、
常に模擬レースが必要なタイプの馬にほどこす調教である。
これには3つのケースがある。

1. 2歳馬のようにレースなれしていない馬。
2. レース同様にエキサイトして走らせなければ、馬体が絞りきれない馬。
3. 気性に問題があり(気が荒い、気が小さいなど)、その矯正トレーニングが必要な馬。

また、併せ馬とひと口にいっても、内と外、
あるいは中と、それぞれ意味が違い、
どこに併せるかも重要なサインとなる。
併せ馬は、2~5頭でするが、
「外に併せる」のは、その馬が強いことの証明である。
多少のコース損をしても、遅れないレベルの馬が外に行くからだ。
「内」の馬は、その外の馬にケイコをつけてもらっているのである。
だから、“内で先着”は、同じ先着でも評価が下がってしまう。
「中」は「内」に似ているが、気が小さいためにほどこされる調教だ。
馬群の中へ突っこめない(騎手にもこういうタイプがいるが)、
他馬が脇へくるとひるむ、耳を絞る、フットワークがバラバラになる、
といった馬は、中、または内へ入る。
そういったワケで、中(内も同じ)で併せる馬は
弱点をかかえているともいえるのだ。
ポイントは、こうした内、中にいた馬がやがて外、
単走となったときだ。それだけその馬が成長した証だからだ。
注意深くチェックしてみることも必要だろう。

・・・次回は金曜日の
更新となります。お楽しみに!

東邦出版発行『知って得する競馬の金言』より
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